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【必見!!】資金繰りが分からないと会社は倒産します

前回までは、「事業再生」について記載しました。
今回は、「事業再生」の続きではなく、「企業経営に必要な資金繰り」について新たに記載したいと思います。

 

1.個人の生活も大企業も中小企業も、「資金繰り」が回っているから存続する

月初めにAさんが自身の通帳を眺めて、「今月10日のクレジットカードの決済いくらだったかな?」。
「この通帳の残高で足りるかな」と、さらに、友人の金遣荒男(カネツカイ アラオ)からはゴルフに誘われているけれど、クレジットカードの枠は大丈夫かな?カードローンもまだ使えたかナとつぶやきます。 

そして、何とか10日のクレジットカードの決済を乗り越えたAさんですが、自身の通帳を眺めてまた、つぶやきます。「やばい。15日の公共料金、保険料の口座振替、20日の住宅ローン返済は足りないじゃない。
カードローンも限度額一杯だし、クレジットカードのキャッシングも使えない。どうしよう?」

これは、個人ベースの「資金ショート」を予測して、その必要資金の捻出に苦労するAさんの姿を想定したものですが、私自身も住宅ローンと子供の学費、そして付き合いゴルフと同僚との飲み会等々、サラリーマン時代の一時期は資金繰りに苦しんだ経験があります。
企業経営も個人の生活も全く同じで、「支払不能になったらアウト」となります。
つまり、個人の場合は、返済やクレジットカードの決済ができなければ、督促状が送られて延滞金が加算され、その時点で一旦、「グレーリスト」(延滞常習者)入りし、次に「ブラックリスト」 (支払不能者)入りとなり資金調達の途が閉ざされます。自己破産、または債権者からの申し立てによる破産宣告を受けて、最低限の生活を維持するための資産以外は全て失い、通常生活のリングからは「退場」となります。

企業の場合も、金融機関との間で当座勘定取引があり、小切手や支払手形の決済が出来なかった場合、第一回目では手形交換所から「不渡り報告」が手形交換所加盟各金融機関に発せられます。
この時点で、企業の信用力は急低下して、企業間信用(現金取引ではなく、手形・小切手受取や一定の売掛期間を許容するもの)も崩壊、仕入代金決済は全て現金取引に変更される等々、必然的に事業継続が危ぶまれる状況に陥ります。

実際に私が経験した話ですが、かってバブルが崩壊して民間の工事発注がストップ、公共工事にゼネコン大手が群がり、従来は採算ベースに乗らないとして見送っていた発注ロットの小さい地方の公共工事入札にまで、ダミーの地域支社を使って参入してくる始末。そして、そのあおりをもろに受けたのが、地方のゼネコンや関東エリアの地元中小ゼネコン各社でした。
地元ゼネコン各社は、隠れた談合組織によって比較的棲み分けが出来ていたとも言え、地元ゼネコン同志が対立する構図はあまり見受けられませんでした。

しかしながら、上からは大手ゼネコンの下押しがあり、地方の公共工事自体も予算削減でパイが縮小する中、次第に生き残りをかけた「争い」が繰り広げられ、談合情報の通報や、談合破り(談合価格以下で入札)が行われるようになりました。

こうした時代背景がある中で、ある地方都市の中堅ゼネコンB社が、月初めに「不渡りを出した」との怪情報が同業者に一斉に同業各社に流れました。
B社については、「手形ジャンプ」(手形期日に決済が出来ないため、手形受取人に別の期日を記した手形と差替えてもらうこと)の噂が以前からあったことから、同業の建設会社社長からその話を聞いたときに、「いよいよか」と思いましたが、「不渡り報告」が出ていないので、「これはおかしい」と直感しました。不渡りは、金融機関、または不渡りをくらった債権者しか知り得ないことなので、「つくり話」であることに気づきました。
いわゆる足の引っ張り合いが生んだ「風評」で、同業者の誰かが建材卸業者(材料屋)に情報を流して、一斉に拡散されたものではないかと推測されました。
この時は、メインバンクの支店が市内金融機関に「事実無根」の連絡を行う等、噂のもみ消しに躍起となったことから、幸いにしてB社は、「風評被害」から立ち直り、現在も地方都市の経審Aランク(経営審査事項、略して経審。入札資格基準)ゼネコンとして君臨しています。

さて、第1回目の不渡りから6ヵ月以内に、第2回目の不渡りが発生すると、「銀行取引停止処分」が手形交換所から出されます。
当座勘定取引は強制解約されて、融資のある金融機関は一斉に「内容証明郵便」を送達して「期限の利益喪失」(融資の最終返済期日まで借りていられる権利)を行い、全額、一括での返済を求めます。
預金の緊急拘束(支払停止措置)、預金と貸出金の「相殺」(そうさい)が行われる等、いわゆる「倒産」となります。
個人、大企業、中小企業に関わらず「支払不能」となった場合は、個人では生活破綻、企業で経営破綻に陥ることとなります。

 

2.経営者にとって資金繰りの把握は必用最低限の仕事

「ドンブリ勘定」、「自転車操業」、と言った言葉を良く耳にしますが、「ドンブリ勘定」とは大雑把で、杜撰な経営を揶揄した言葉で、「儲かっているか儲かっていないのかよく分かっていないこと」を意味します。赤字が続いていることに気付かずに預金残高が減少して来て、初めて儲かっていないことに気付く経営者もいます。そして、手元資金に余裕がなくなると「自転車操業」に陥ります。
回収した売掛金や、借入金は即支払に回されて手元に資金が残らず、自転車の車輪のように常に右から左に資金が回転している状態を指します。
経営者としては、自社の支払能力がどういう状況(余裕のあるなし)なのか、資金ショートの心配はないのか、資金ショートがいつ起こるのかを的確に把握して、資金ショートが起こらないように、早めに対策を講じることが必用最低限の仕事であると考えます。

 

3.資金繰りとは

資金ショート、支払不能、資金繰り破綻の怖さを冒頭で述べましたが、ここで、あらためて資金
繰りについて考えたいと思います。
企業の営業活動を通じて商品が販売され、その代金が回収されて売上金となって企業に資金が還流します。
その売上が現金なのか、一定期間後の期日入金なのか、手形支払なのかによって、資金繰りの状況が変わります。
つまり、現金回収であれば、手元に現金が残り、支払資金が一応確保されます。一方、支払は仕入れた商品の支払があり、従業員の給与支払、諸経費の支払等々があります。
売上金の入金と同じく、現金支払なのか、または手形支払なのか、一定期間後の振り込み払なのかによって、資金繰りの内容が異なります。ここで資金繰りを整理したいと思います。

資金繰り = 今後一定期間内の収入と支出の状況(バランス)を示すものと言えます。

そして、収入と支出のバランスを「収支」と呼びます。「収支トントン」といった言葉を聞いたことがあると思いますが、その月の売上金の回収と支払がほぼ一致していることを意味します。
「収支トントン」では、手元に資金が残らないことになりますので、収益性の観点からは利益率の低いビジネスモデルと考えられます。
次回以降は、資金繰り形態と運転資金の必要性、資金繰り予想計画、資金繰り改善の進め方等々について解説したいと思います。

 

設立後まだ間もない創業期の会社例

事業の「収入- 支出」(以下、収支と呼びます)を見た場合に、1年間、6ヶ月間等の一定期間内で収支が、収入>支出(入超)であれば、そこでは利益が出ている状況であり、支払資金としての現金・預金(以下、手許資金に略)が確保されているはずです。 しかしながら、いかに手許資金に余裕があっても、本来の使い道(資金使途)を理解していないで、原材料や商品仕入資金等の運転資金を土地、建物、機械設備等の固定資産投資に流用してしまい、その分の資金調達(借入)を行わずにいると、買掛金支払に窮して「支払不能」に陥り倒産するといった「勘定合って銭足らず」、いわゆる黒字倒産について、前回までお話して来ました。

この黒字倒産の原因は、経営者が自社の収支構造、収支バランスといった「資金繰り」について理解していなかったことが原因であることは、既に読者の皆さんもご承知のことと思います。 そこで、今回はこうした事態に陥らないために、自社の収支構造、収支バランスがどういう状況にあるのかといった点から、「資金繰り」について考えてみたいと思います。

1. 収入について

それでは、設立後まだ間もない創業期のA社を想定して話を進めてみたいと思います。 

【合同会社A社の事業概要】※A社は実在の企業ではありません。

・所在地 東京都北区滝野川 1-3-10 ・設立  2018年6月1日

・代表者  代表取締役 B 氏(45歳、埼玉県川越市出身)

・業種  各種金型設計製作 電気製品開発設計 ・資本金 5百万円 ・従業員 2名(うち、パート1名)

・事業概要 <現況> 大手電機製品メーカーC社の開発部門に長年勤務していたB氏が、自身の製品開発、製品設計設技術を活かして自社製品開発に取組みたいと一念発起し、C社を退社。現在は主にプラスティック成型用の金型設計の事業が主体となっていますが、最近は金型の設計製造の受注を受けて金型製造を外注し、完成品として金型を納品する業務の比率を高めています。

(1)A社売上の内訳 A社の売上構成は次のとおりです。

受注先売上金回収条件
D社平均月商 5,000千円 月末締め翌月末現金支払(振込) 
E社平均月商 3,000千円 月末締め翌月末 現金50%、手形支払(サイト90日)50%支払
F社平均月商 2,000千円15日締め翌月末全額手形支払(サイト120日)
合計平均月商 10,000千円

次に、A社の4月末売掛金元帳を見てみましょう。

(単位:千円)

受注先売掛金残高
D社5,000
E社1,500
F社
6,500

さらに受取手形元帳を見てみましょう。

受注先売掛金残高受取手形明細(手形期日)
D社 
E社4,5001,500(6.30) 1,500(7.31)1,500(8.31)
F社8,0002,000(6.30) 2,000(7.31) 2,000(8.31) 2,000(9.30)
12,500 

以上のように、同社の平均月商は10百万円ですが、売上金構成は現金回収比率が50%、手形回収比率が50%であり、上記の残高状況を月商との比率で整理すると次のようになります。

ア.売掛金回転期間 売掛金

6,500千円 ÷ 月商 10,000千円 =0.65ヶ月・・・①

イ.受取手形回転期間 受取手形

12,500千円 ÷ 月商 10,000千円 =1.25ヶ月・・・②

ウ,受取勘定回転期間

(売掛金6,500千円 + 受取手形 12,500千円)÷月商 10,000千円=1.90ケ月(①+②)

【ポイント1】

上記ウの受取勘定回転期間は、売掛金及び受取手形回が現金化されるまでの期間であり、 収支バランスを考えるうえで重要なポイントになります。

事業継続に最も大切なことは、売上の確保ですがその回収条件によって自社の資金繰りに大きく影響することを認識してください。

現金商売。たとえば飲食業の場合を想定して下さい。 主に個人客が中心の場合は、通常の飲食代金は現金支払いが多く、クレジット売上比率が低ければ売掛金は発生せずに、売上金の入金は即現金、または預金勘定に振り替えられると思います。

売上金の回収は「現金」が一番ですが、製造業では納品してその時点で、少額かつ単発取引は別として、即現金回収とはいきません。ましてや、製品納入が継続して反復する場合が通常の取引である場合がほとんどですので、この売掛金の回収サイト、受取手形のサイト(手形期日=手形取立金が自社口座に入金されるまでの日数)には注意を払い、極力受取勘定回転期間を短縮するように努力することも大切です。

それでは、A社の売上金の回収条件が変更された場合を想定して、A社にどのような影響が生ずるかをみてみましよう。

(2)売上金の回収条件の変化が与える影響

<現在>

受注先売上金回収条件
D社平均月商 5,000千円 月末締め翌月末現金支払(振込) 
E社平均月商 3,000千円 月末締め翌月末 現金50%、手形支払(サイト90日)50%支払
F社平均月商 2,000千円15日締め翌月末全額手形支払(サイト120日)
合計平均月商 10,000千円

<変更後>

受注先売上金回収条件
D社上記に同じ(変更なし)
E社上記に同じ(変更なし)
F社上記に同じ(変更なし)
G社新規受注。平均月商 5,000千円10日締め、翌月末日全額手形支払(サイト120日)
合計平均月商 15,000千円

A社は、G社の新規受注を獲得しましたが、上記取引条件の提示を受けて回収期間が150日と長期化することから、現金支払比率を20%としてもらう分、受注単価を引き下げる交渉を行ないましたが応諾がえられませんでした。

利幅も他社比高い受注単価であったことから、社長のB氏も新規受注に踏み切ることとなったものです。 それでは、G社との取引開始後のA社の売掛金・受取手形の元帳を次のページで見てみたいと思いますが、その前に、G社との取引開始直後のA社 B社長の耳に、B氏が以前勤めていたC社の元同僚から次のような情報提供が寄せられたことから、B社長のG社に対する信用面での信頼度がやや後退することとなりました。その元同僚の話とは次のような内容でした。 「G社はH社の新製品の部品の発注を受けましたが、不具合が見つかり、不良部品の全品回収と再生産で大変なロスを出したようだとの情報でした。

今回のA社への新規受注は先方からの打診であり、B社長も設立当初は新規受注先開拓のために、頻繁に足を運びましたが、G社の金型製作は古くから付合いのあるI社に頼んでいるので、新規外注先への発注は無理との説明を受けてからは、1年程度の間G社への訪問を見合わせていました。

そうした矢先、G社購買担当者からB社長に電話があり、今回、H社からの受注増加でI社だけでは、金型の設計・製作が間に合わない状況になり、外注先を探していたところ、以前、B社長が良く当社に来ていたのを思い出したので、当社の仕事を手伝って貰えないかとの説明を受け、A社がG社からの新規受注に至った経緯があります。 さて、早速、A社のG新規受注後の売掛金、受取手形の元帳を整理してみたいと思います。

(単位:千円)

受注先売掛金残高
D社5,000
E社1,500
F社
G社
6,500

受取手形元帳

受注先受取手形残高受取手形明細(手形期日)
D社 
E社4,5001,500(6.30) 1,500(7.31)1,500(8.31)
F社8,0002,000(6.30) 2,000(7.31) 2,000(8.31) 2,000(9.30)
G社10,0005,000(8,31) 5,000(9,30)
22,500 
ア.売掛金回転期間 売掛金

6,500千円 ÷ 月商 15,000千円 =0.43ヶ月・・・①

イ.受取手形回転期間 受取手形 

22,500千円 ÷ 月商 15,000千円 =1.50ヶ月・・・②

ウ,受取勘定回転期間

(売掛金15,000千円 + 受取手形 22,500千円)÷月商 15,000千円=1.93ヶ月(①+②)

以上のように、6月時点の現状では、G社新規受注による手形回収は2ヶ月のみであり、受取勘定回転期間も0.03ヶ月と僅かな伸びですが、今後も受注が継続すると5百万円×120日(4ヶ月)=20百万円のG社在庫手形が存在することになります。 その場合、受取手形回転期間は、32,500千円÷15,000千円=2.17ヶ月、受取勘定回転期間は、2.6ヶ月となり、新規受注開始以前よりも0.27ヶ月回収期間が伸びてしまいます。 以上のように、売上金の回収が現金か手形か、そして売掛金と手形の回収期間(サイト)によって、資金繰りへの影響を見て来ましたが、次回は、受取勘定回転期間の長期化が資金繰りに与える影響について、さらに詳しく見て行くことにしたいと思います。

監修者

ひとこと

弊社は、「税理士」「中小企業診断士」「元銀行の支店長」など数多くの専門家が集まっております。経営のみではなく、「財務・経営・金融機関対策」などのトータル的にアドバイスを行ってまいります。気になる方は、お気軽にお問い合わせください。

 

氏名

桒原 賢志(税理士)

資格

:税理士

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