私的再生とはメリットとその流れ
事業再生法
会社の経営が成り立たなくなった場合には、今おこなっている事業の内容やお金の使い方などを見直す必要があります。事業を再生しようとする場合にはいくつかの手法がありますが、私的再生をおこなえば法律にとらわれず柔軟に事業再生を実現することができます。
私的再生とは?
裁判所や弁護士などに会社と債権者の間に入ってもらい手続きを進めていく法的再生に対し、私的再生とは事業再生を図るにあたり返済などが滞ってしまっている債権者に対して会社が交渉や示談を直接おこない、和解を求めることで債務の免除や返済期日の延長など、それぞれの債権内容の見直しや変更をおこなっていくことで事業の再生を図ることをいいます。
法的再生のように裁判所などの公的機関から監督指導などを受けずに手続きをおこなうため、社会の表に出るようなことがなく実態としても把握しづらく内容が非常にわかりづらいのが特徴でもあります。法律を背景として手続きをしていく訳ではありませんので、この私的再生をおこなったからといって必ずしも債務免除がおこなえる訳でもなく、得られる結果は全て当事者間での交渉次第となります。
私的再生のメリット
私的再生をおこなった場合の最大のメリットとしては、私的再生をおこなっていることが社会に公表されないという点です。法的再生の場合は手続き上裁判所などの公的機関への申立てなどをおこなわなければならず、その件については周囲に公表されてしまいます。私的再生や法的再生をおこなっているということはその会社の経営問題や資金の枯渇化などが発生していることになります。
そして、このことが公になれば取引先からの信頼は失われ再生手続きがおこなえたとしても再生後の事業に支障をきたす恐れもでてきます。
しかし、私的再生の場合はそれらの状態に陥っているということは当事者間でしか把握できないため、会社の信頼やイメージを崩すことなく手続きを進めることができ、手続き後の事業においても支障がでるリスクは最小限に抑えることができます。
その他にも、法的な手続きではないため定められたスケジュールどおりに手続きを進めなくて良い為その時の状況に応じてスケジュールを組み柔軟に対応することができます。
また、法的再生の手続きをおこなうには裁判所へ予納金を支払う必要があることや、業務を依頼する弁護士への費用など様々な多額の費用が発生することも考えられます。しかし、私的再生の手続きには裁判所へ支払う予納金は必要がないこと、そして弁護士に依頼する場合も法的再生の手続きに比べると安く済ませることができることなどから、支出面で考えても大きなメリットとなります。
私的再生のデメリット
私的再生のメリットを見てみると法的再生よりも魅力的かつ簡単で、良いことばかりのように感じる方も多いと思いますがデメリットもいくつかあります。私的再生は手続きが比較的簡単であることが大きなメリットといえますが、その反面、法的拘束力がないからこそ手続きが進まないこともあります。
法的再生の場合は最終的な再生計画の決議をとる際に、過半数の同意を得ることができればその再生計画は可決され裁判所から認可を受けることができます。ということは過半数以外の債権者の意見は無視できるということになります。
しかし、私的再生の場合はそれらの拘束はないため、当事者間で話し合いが平行線をたどってしまうとなかなか再生手続きを進めることができません。そのような債権者に対して交渉内容や示談内容を譲歩してしまうと、その他の債権者との対応に差が生まれ結果として不公平になってしまいます。
そうなった場合、話し合いをスムーズに進めることができていた債権者からも反感を買うことになり、信頼が損なわれ手続きを進めることが難しくなってしまいます。
私的再生については自由にスケジュールを組み自由に交渉や示談を行うことができますが、最終的には債権者全員の同意が必要となるため、その分手間が増えてしまいます。この合意を得るためにはいかに債権者全員を平等に扱うかがポイントとなります。
また、債権者のなかには地域の金融機関などが含まれている場合もあるかと思いますが、金融機関の債権に対して担保を設定している場合には注意が必要です。破産手続きなどが発生した場合には差し押さえ処分などについては中止させることができますが、私的再生における手続きの場合は法的な拘束力が無いため、金融機関による差し押さえ処分などを中止させることができません。
私的再生の流れ
私的再生の場合は法的再生のように定められた書類や申立て等の手続きの必要がなく、当事者となる会社と債権者同士での話し合いにより手続きが進められていきます。その為会社は債権者に対して私的再生手続きに至った経緯などをしっかりと説明した上で、債権者に対して具体的にどのようなことを希望するのかなどを提示していきます。
具体的な例としては「現在ある債権のうち、一定額を支払うかわりに、残りを免除してもらうこと」や「支払期日の延長や減額」、「一括返済のところを分割返済へ変更してもらうこと」などがあげられます。それらの条件を提示して債権者からの同意を得るためにはそれ相応の説明を行わなければならず、支払う期日を延長してもらうにしても会社が今後どのような事業改善計画をもって事業に取り組んでいくのか、その計画にある事業の収益性は見込めるのかなど、具体的な事業計画を債権者に伝えなければ債権者は納得することはないと思います。
債権者も事業をおこなっている訳ですので自社の売上代金の回収となりますし、債権者が個人事業主の場合はその債権が生活費に直結してくるので、生半可な事業計画では債権者を納得させることは難しいといえます。
上記にもあるように私的再生をおこなうには債権者全員の同意が必要となるため、私的再生における成功のカギとなるのは「債権者全員に平等で、かつ債権者が納得のできる内容の事業計画ができているか」になります。
私的再生の流れ自体は特に何もありませんがこの事業計画を作成することは決して簡単ではありません。そのため、この事業計画の策定に一番時間をかけておこなっていくことが必要になってきます。
民事再生の相談は「企業パートナー110番」へ
上記にもあるように私的再生における一番大事なことは事業計画の策定です。ここをいかに具体的により現実的な視点で策定していくことで債権者に対して、事業をどうにかしようときちんと考えられていると伝わり、話し合いなどがスムーズに行えるようになる場合が多いようです。
これらの事業計画の策定などの業務は一般の未経験者が簡単に作成できるものではなく、きちんとした事業計画を策定するにはやはり専門家である弁護士などに業務を依頼することが一番安心であり確実になります。
しかし弁護士などにも得意分野や不得意分野があるので、そういった事業再生手続きを専門としている弁護士を見つけることが民事再生手続きをスムーズにおこなうための第一歩となります。また、最近では弁護士などの専門家が自分たちでも気軽に事業再生の手続きについて調べられるようにホームページ内で解説をおこなっているページもありますので、まずは、事業再生についての情報を様々な媒体から収集してみてはいかがでしょうか。
監修者
ひとこと
「お客様の目標達成のお手伝いをする」。私達には中小企業を何百社と見てきた「実績」があります。ぜひ、まずはご相談ください。
氏名
山取 大希
資格
:税理士 (関東信越税理士会川越支部 登録番号 128770号)
:事業承継士
:一般社団法人 事業と資産を承継させる会 代表理事
:川越一番街商業協同組合 顧問税理士