コベナンツ融資とは?銀行から提案された時に検討するべきこと
取引をしている銀行から「コベナンツ融資」を受けませんか?というコベナンツ融資のすすめがあることがあります。「コベナンツ融資」と聞いてもどのような融資なのか知らないという人がほとんどだと思います。知らないものに対して判断することは難しいですよね。したがって、今回、「コベナンツ融資」の概要について説明し、自社で採用するかどうかの判断材料にしてください。
コベナンツ融資とは
コベナンツ融資とは「一定の特約付き融資」のことを指します。通常、融資の際には「毎月〇万〇年にわたって、金利〇%を上乗せして返済します」という契約を結ぶことになりますが、コベナンツ融資の場合、それにさらに「融資返済中は〇〇に努めます」「〇〇をしないようにします」といった「特約」がつくイメージになります。
具体的には特約(条件)付きで、それに反した場合、融資が打ち切られ、残額返済の義務が生じたり金利優遇の取り消しがあったりします。別に、毎月の返済は問題なく行われていても、コベナンツ条項に反するとアウトになってしまうという結構厳しい融資です。
コベナンツ条項としては例えば下記のような例があります。
コベナンツ条項の例 |
内容 |
報告・情報提供義務条項 |
毎月の経営の試算表の提示や資金繰り表などの財務資料の提出、報告義務 |
担保制限条項 |
提供する担保の制限。会社の資産を勝手に債権者に担保に出してはいけないなどの義務。 |
資産譲渡制限条項 |
会社の資産を勝手に売却してはいけない。売却や処分をする場合、事前に金融機関の許可を取る義務 |
格付維条項 |
金融機関からの信用格付けが維持できる経営を行う義務 |
財務制限条項 |
借入会社の財務諸表の数字を一定に維持する義務。財務指標のノルマ。純資産の維持、○年以内に営業利益を〇〇〇〇万円にする。流動比率を〇%~〇%内に維持する |
ただ、経営を行って利益を上げ、返済していけばいい通常の融資とは異なり、コベナンツ条項付の融資は、自社の経営方法や実際の経営内容、その結果としての財務諸表などについて細かい条件が付いています。
まるで、金融機関が先生となり、一定の枠の中で営業し、結果を出すことで、特別に融資を認めてあげる、そのようなイメージであり、相当経営に足かせというか箍がはめられてしまう融資になります。
自由な経営をすることがなかなか難しくなりますが、金融機関から口を出されるということをポジティブにとらえられるようになると、コベナンツ融資への見方が変わります。そう、金融機関は融資や借金経営のプロフェッショナルでもあるのです。
コベナンツ融資の手数料
コベナンツ融資の場合、金融機関には借入金額にかかる金利の他に、「手数料」(アレンジャーフィー、エージェントフィー等)を支払う必要がなります。指導代と言い換えてもいいのかもしれません。
経営についていろいろ条件、制限がある上に、手数料も追加で支払わなければならなくなることを覚悟してください、
金額的には金利換算すると、0.1%くらいのことが多く、大きな負担にはなりません。ただ、金利が「利子割引料」として経費に計上できますが、コベナンツ融資の手数料は「融資手数料」等の仕訳となります。どちらも経費だから変わらないように思えますが、実は相違点があります。
- 利子割引料:非課税仕入:消費税がかからない
- 融資手数料:課税仕入:消費税が発生する
消費税課税業者の場合、ここが消費税の納税額にかかわってくるので意外と重要です。原則、利子は非課税、手数料は課税対象ですが、場合によっては融資手数料を利子割引料とすることができるかもしれません。
これについては専門家の指示が必要になりますので、企業パートナー110番のスタッフ、コンサルタントにぜひ聞いてみて下さい。
コベナンツに違反したらどうなる?
融資時に設定されていたコベナンツに違反した場合どうなるのでしょうか?コベナンツ融資は条件付き融資ですから、条件というその前提がなくなってしまうことになります。
結論として、コベナンツ違反は「期限の利益喪失事由」に該当します。融資は一定期間かけて一定額ずつ返済するという、借主にとってのメリットがありますが、コベナンツ違反をすることでその「期限の利益」を喪失します。
つまり、そのため金融機関側から「一括返済」を要求すること(貸した分をすぐに返して)と言われた場合、法的に抗弁(主張)することができまくなります。一括返済しろと言われたら断れなくなります。
しかし、実際の運用ではいきなりそうした強硬手段をとることは少なく、まずは企業に改善を求めるケースがほとんどです。「収支を改善してください」「5年以内に黒字化してください」など、より細かい(厳しい)経営指導が入る可能性があります。
条件を満たせなくなったから融資打ち切り、ではなく、条件を満たせるようにさらに細かく経営に介入される、というのがコベナンツ融資の現実のようです。
コベナンツ融資のメリット・デメリット
通常の融資ではなくコベナンツ融資をすることについて、当然メリットとデメリットがあります。
借りる側(企業)、貸す側(金融機関)双方について、メリット、デメリットを表にまとめました。
コベナンツ融資の借手企業のメリット、デメリット
借りる側(企業)にとってのコベナンツ融資 |
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メリット |
デメリット |
通常ならば担保や保証人が必要な高額融資を受けられる |
会社の経営について縛りがかかる、積極的なリスクある経営ができない |
金利がある程度優遇される |
審査条件が厳しく融資まで時間がかかる |
金融機関と親密になりいざという時頼りになる |
金融機関に口出しされてしまう |
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コベナンツ違反の際のペナルティ |
コベナンツ融資の貸手金融機関のメリット、デメリット
貸す側(金融機関)にとってのコベナンツ融資 |
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メリット |
デメリット |
リスクヘッジ、貸し倒れ防止 |
手続きの手間、コスパ |
顧客との親密化 |
コベナンツ調査の手間、コスパ |
条件を付けることで、金融機関は通常の融資以上に借主(企業)に手綱をつけることができます。これにより放漫経営による返済不能リスク、貸し倒れリスクを防止します。
一方 企業側も、金融機関の「指導金融」となることで、従来借りられなかった金額の融資を受けられたり、担保や保証人が不要になったりします。金融機関から口は出されるようになりますが、それを我慢できれば見返りも大きくなります。
従来型の融資では金額的に足りない、しかし無担保、無保証人の融資にこだわりたいという事業者はコベナンツ融資を検討されても良いでしょう。
まとめ 資金調達のご相談は「企業パートナー110番」へ
以上、コベナンツ融資についてその概略やメリット、デメリットを説明しました。金融機関から借入を返済している際に、様々な条件があり、それをクリアしつつ、指導を受けなければならない融資になります。
そういうことは嫌だという人は従来型の融資を受けるべきですが、通常型融資では借りられない金額の融資を受けることもでき、担保や保証人も不要な条件を設定すれば、意外に使い勝手が良い融資にもなります。
一方、あまりに会社の経営を縛られる条件を付けられても困ります。その匙加減は素人にはわからないところがあるため、ここは専門家の力を借りましょう。
「企業パートナー110番」にはコベナンツ融資をはじめ資金調達に関するプロフェッショナルな専門家が揃っています。是非一度相談していただき、効果的な資金調達について考えてみて下さい。