中小企業の事業再生・経営改善は企業パートナー110番にお任せください。

0078-6012-8177

受付時間 9:00〜18:00(土日祝定休)

繰延税金資産とは?取り崩し?|会計処理の仕訳について

deferred-tax-asset

繰延資産はみなさんが経営を行っているうえで聞いたことがある資産でしょう。これを上手に活用することで、減価償却によって任意に税金を減らすことができます。似た言葉に今回紹介する「繰延税金資産」というものがあります。この繰延税金資産はしっかり理解することが求められる繰延資産とは似て非なる概念です。それでは繰延税金資産について解説していきます。

繰延税金資産とは

繰延税金資産とは「税効果会計」という特殊な会計ルールに適用される資産です。税効果会計について説明すると、それだけで1記事使ってしまうので、簡単に説明すると、企業の日常的な会計と税法上の会計の差異を調整するため、前もって税金を資産計上したものになります。

何かの理由(赤字幅の拡大、設備の購入など)で数年後、支払わなければならない税金が減る見込みがある場合、その「支払う税金が減る」というところに資産価値を評価します。その結果「支払いが減る税金」(払いすぎた税金)を資産計上するのが繰延税金資産になります。

実際に「税金を支払わなくて済む」(税金が減る)こと自体を資産にしてしまおうという考え方で、通常の会計ではそうしたことができません。それを可能にするのが「税効果会計」という特別な条件になります。

繰延税金資産は税効果会計の下、前払いした税金がいつか帰ってくるだろうと想定し、「払いすぎた税金」を貸借対照表の資産の部に計上します。将来戻ってくる税金を税効果会計の下で資産として計上することで、バランスシートの評点を上げることができます。

また、企業会計と税法上の会計の差異を調整する「バッファ」として使うこともでき、有用性が高い勘定科目になります。

繰延税金資産の取り崩し?

企業の繰延税金資産は、業績が良く、利益が発生し、納税額が増えることを前提に、それを「前納」し、払いすぎたものとみなす制度です。もし、業績が悪化し赤字決算になってしまった場合どうでしょうか?

赤字決算ならば(法人住民税均等割を除き)法人税等が発生しません。税金の発生がなければ、「支払う税金が減る」以前に税金がなくなり、前もって計上した税金は会計処理の過程で取り消されてしまいます。

決算の際に、税金を再計算し、結果的に繰延税金資産が消えてしまうことを「繰延税金資産の取り崩し」といいます。

そうなると、バランスシートについても作り直さなければならず、また、金融機関からの融資を受けようとしている場合などは減点査定となってしまいます。

繰延税金資産の取り崩しによる影響

そもそも繰延税金資産を計上できる大前提は、利益があり支払う税金が発生することです。逆に、最初から(ここ数期は)赤字になると予想している企業には、そもそも税金を払う必要がなく、「支払う税金が減ること」に対して資産効果を見込めないので、最初から繰延税金資産自体を計上できません(税金が発生しないので、前納も税金が減るもないわけです)。

問題となり影響が出るのは、最初に利益を見込んで繰延税金資産を計上していた企業が、予期しない、突発的な業績不振で事前に予想していた税金の支払いがなくなり、繰延税金資産の取り崩しを行うケースです。

今般の新型コロナウィルスや大きな自然災害などがこれに該当します。

この場合、単にバランスシートから繰延税金資産の資産計上がなくなるだけでなく、取り崩しの際に「法人税等調整額」という費用(手数料)がかかります。

つまり、繰延税金資産取り崩し+手数料(法人税等調整額)がかかるため、実際の赤字以上に負担が増え、さらに危機的な会社の財政を圧迫してしまうという悪影響が出ます。

とりあえず利益が出ているから、リスクヘッジとして繰延税金資産を計上しておこうというのは、逆にリスクがある行為であり、やみくもに資産計上すればよいというものではありません。事前に専門家等税に詳しい人に聞き、繰延税金資産の計上について理解しておくことが大切です。

繰延税金資産の会計処理

繰延税金資産はどのように会計処理すればよいのか、ここでは簡単に解説します。複雑な制度でもあるので、顧問税理士や専門家などに相談をしてください(後述の「企業パートナー110番」でも大歓迎です)。

繰延税金資産の対象となる税金

繰延税金資産として計上できるのは以下の税金になります。それ以外は計上できないので注意が必要です。

  • ・法人税
  • ・住民税(均等割を除く)
  • ・事業税
  • ・外国で課される利益を課税標準とする税金

以上が繰延税金資産として計上できます。それ以外のもの、消費税や固定資産税、事業所税などは繰延税金資産の対象外となります。

繰延税金資産の計算方法

まず「一時差異」を把握します。一時差異とは、貸借対照表に計上されている資産・負債の金額と、課税所得計算上(税務上)の資産・負債の金額との一時的な差異のことを指します。一時的差異はいずれ解消するものです。

繰延税金資産は、この一時差異の解消過程で、将来所得が減額することにより、課税額を返照させます。

それを踏まえて、繰延税金資産はこのように計算します。

繰延税金資産=将来減算一時差異×法定実効税率

 

例えば、法人税の法人実効税率は下記の公式によって算出されます。かなり難解で自分だけでは難しそうです。

法定実効税率 = {法人税率 ×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率} /(1+事業税率)

 

繰延税金資産の仕訳

企業会計と税務会計に差異(将来的減算一時差異)が出て、繰延税金資産が発生したときには以下の仕訳を行います。

借方

貸方

繰延税金資産

¥〇〇〇〇

法人税等調整額

¥〇〇〇〇

法人等調整額

¥〇〇〇〇

繰延税金負債

¥〇〇〇〇

企業会計と税務会計の差異(将来的減産一時差異)が解消され、節税となった場合、以下の仕訳を行い、差異が解消されます。

借方

貸方

法人等調整額

¥〇〇〇〇

繰延税金資産

¥〇〇〇〇

繰延税金負債

¥〇〇〇〇

法人等調整額

¥〇〇〇〇

繰延税金資産の回収可能性

将来赤字になってしまえば、繰延税金資産は無意味になってしまうことはご理解いただけたはずで、繰延税金資産を資産計上する際にはその「回収可能性」を考える必要があります。

繰延税金資産の回収可能性とは、繰延税金資産が将来の支払税金を減額する効果があるかどうかの可能性、を指します。数年後、回収できる見込みの税金がなければ、最初から繰延税金資産を計上する意味がないからです。

回収可能性を算定する際には、過去3期および当期に十分な課税所得があり、その環境が当面(近い将来)続き、大きな経営環境の変化が予想されないことが見込める場合が前提となります。

この条件を満たせば、将来的にも、一定額の課税所得、および税金の発生は予測できるので、繰延税金資産の回収可能性ありと判断されます。

回収可能性ありと判断されれば、税理士等の専門家と相談しながら、繰延税金資産の計上可否を検討できます。回収可能性がない場合や予測できない場合は、無理に繰延税金資産を入れると法人税等調整額により、大きなダメージを負うリスクを持ちます。繰延税金資産の計上は義務ではなく、あくまで任意ですので、慎重に判断をお願いします。

まとめ 企業の経営に関することのご相談は「企業パートナー110番」へ

このように繰延税金資産は、使い方次第で、資産を増やすことができ、金融機関からの借入の際などに加点評価を与えることができますが、減収などが起きてしまうと、法人税等調整額によって、計上していた資産以上の支出を負うことになり、経営上の大きなリスクになります。

しかし税効果会計を含めて、税務に詳しくない人にとっては「なんのことだかわからない」というのが正直なところです。

そこで、税務に詳しく、繰延税金資産などにも明るい専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。自社に繰延税金資産を計上する回収可能性があるのか、ないのか、この判断は難しく、その判断を誤ると大きなリスクに繋がります。

「企業パートナー110番」には、この分野に明るい専門家がおり、みなさまの会社の決算書や事業の現状をお聞きした上で、繰延税金資産計上の可否や今後の経営のあり方などについてアドバイスさせていただきます。

「税効果会計?」「繰延資産?」わからなくて当然です。ですので、わかりやすくアドバイスさせていただき、今後の経営が少しでもプラスになるよう尽くさせていただきます。

使い方次第では非常に有用な繰延税金資産、一度考えてみてはいかがでしょうか?

       2021©企業パートナー110番.