債券とは?株式との違い、種類や発行条件とは一体なに?
企業が資金調達する方法としてまず思い浮かぶのが「株式の発行」ですが、それ以外にも「債券の発行」という手法があります。株式による恒常的な資金調達は、株式上場などの手間がかかりますが、債券の発行は株式発行にはない特徴、メリットがあります。今回は資金調達の方法として債券について考えていましょう。ひょっとすると株式よりもいい面があるかもしれません。
債券とは?
まず債券とは何か、理解しておきましょう。国の予算返済の際に「赤字国債を〇兆円発行して」や「債券の返済分が国の財政を圧迫して」等のニュースを耳にすることがあるかもしれません。
債券(「債権」でないことに注意)とは、国や政府・地方公共団体、企業などが、資金調達のため、投資家や一般の方などから借り入れをするために発行する有価証券です。
発行者の立場からすれば債券は資金調達の手法であり、投資家や債券を購入する一般の方から見ると、手持ち資金を利殖していくための方法です。債券を購入して、その利子を自分たちの利益としていきます。
債券の発行条件
資金調達方法として広く利用されている株式発行と債券との比較は後で行いますが、債券には発行条件があり、それを満たすものが発行し、譲渡することで資金調達できるようになっています。
債券発行の条件とは
額面金額 |
債券の購入額(販売額)です。これが「元本」として償還日(満期日)に債券購入者で返済されます。 |
表面利率 |
額面金額の何%が一年間に利子として支払われるかの金額です。 かつては数%ということもありましたが、超低金利政策のため、現在は「0.0〇%」というものがほとんどです。それでも「0.00〇%」の銀行の預金金利よりは高くなっています。 |
償還日 |
債券はいただいた債券購入額を一定期間経過後(5年~10年が多い)、購入者へ一括返済します。それが償還日です。 株式と違い、元本全額保証して返済します。 |
利払い日 |
利子が支払われるタイプの債券の場合に利子が支払われる日です |
実際に例を挙げてみましょう。
政府が発行する国債(個人向け国債5年)
額面金額 100万円
利率 1%(今はこんな利率はありませんが)
利払い日 年2回(5月と11月)
償還日 5年後の4月1日
100万円購入した人には、年2回、5000円ずつ利息が個人に支払われます。実際にはその利息から税金(所得税15.315%、住民税5%)が天引きとなり、手取りは利率の約80%になります。なお、障害者などで「マル優制度」を最寄りの税務署長に申請した場合、利息は免除され、100%受け取ることができます。
利息を年2回×5年=10回支払ったのち、5年後の4月に購入額の100万円を購入者で返済します。つまり、期間限定でお金を預かり、資金調達して、利息を購入者へ支払いながら、期限が到来すると原本を100%返済する仕組みです。
債券の性格
債券は一般的に
- 1.収益性
- 2.安全性
- 3.換金性
という3つの特徴を持ちます。
収益性
債券の利子は発行時に固定され、その後の金利水準によって変動することはありません。不動産や株式などは、価格が乱高下し、将来どれだけ収益がもたらされるかわからない投資的、投機的要素を持ちますが、債券は購入時に一定の利息収入が確定します。
債券は計画的な資金運用の手段としての特徴を持ちます。
安全性
債券は株式とは異なり満期日があり、その間に債券価格がいくらになろうとも、その期限になれば一般に額面金額(買った金額)で償還されます。つまり、元本は保証されるので、購入者側は損をすることは少なくともありません。
償還や利子の支払いについては、元本保証で確実に行われるよう法律で様々な規定が設けられています。逆に言うと、債券を発行すると、今後どれだけ経営が傾き債券価格が下がっても、元本保証して償還しなければならないことになります。
換金性、流動性
債券は原則満期まで運用しますが、その間に途中換金も可能です。株式のように価格が上がって高く売れるということはありませんが、広範囲な投資家に保有されている債券ほど利率も高い傾向にあるので、譲渡され、流動性が高くなっています。
債券と株式の違いは? 債券を発行するための条件とは
債券と株式は似ている部分もありますが、元本保証のことなど違いも多そうです。まず、債券と株式の違いを確認し、その後債券を発行する条件について知っておきましょう。
債券と株式の違い
債券と株式の違いを表にしました。
債券 |
株式 |
|
収入(利益) |
利息として手に入る |
配当として手に入る |
換金方法 |
償還(期限到来)か売却 |
売却した場合のみ |
換金時の金額 |
償還:元本+利息 売却:売却価格+売却までの利息 |
売却価格(その時の株価) |
売買方法 |
店頭取引+ネット |
証券取引所+ネット |
購入者の運用の手間 |
ない |
日々株価をチェックする |
元本割れ |
しない |
する |
リターン |
定期預金よりは多い |
購入額の数倍にもなる |
リスク |
小さい |
大きい |
債券は定期預金に似た性質があります。一方、株式は日々株価が上下し、資産価値も大きく変動します。買った価格の数分になることもあり、ハイリスクハイリターンです。
逆に債券の場合は、定期預金に近いので、ローリスクで、定期預金よりはマシな利率です。国債や自治体の債券であれば、国が破綻しない限り元本が戻ってきます。預金のように1000万円まで倒産しても保証という制度はありませんが、株式よりははるかに安全です。
定期預金で塩漬けにする余ったお金があるなら、債券を購入したほうがまだリターンは大きくなります。思い入れのある企業や自治体の債券であれば、購入するモチベーションも上がるはずです。
債券の発行条件
債券の発行条件とは、債券の発行にあたり購入者に示すことが求められる取り決め事項です。
上でも書きましたが、債券の価値は、「利率」、「償還までの年限」、「発行価格(発行後は購入価格)」で決まりますが、それ以外にも項目を明示します。最近はペーパレス化が進み、紙の債券は少なくなりましたが、以下のことは購入者に示しましょう。
わかりやすいように銀行からの資金調達(融資)の場合と並べてみました。
債券による資金調達 |
銀行による資金調達 |
発行体(発行団体、企業) |
お金を借りる人 |
発行額 |
借りるお金の額 |
発行日 |
借入の日 |
償還日(満期日) |
返済の最終期日 |
年限(期限) |
お金を借りている期間 |
利率 |
支払利息 |
購入者への利払日 |
銀行へ利息を支払う期日 |
これらを債券の購入者にわかるようにします。
主な債券の種類
債券にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴を持っています。こちらも表にまとめましたので参考にしてください。
円建て債券 |
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公社債
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国債 |
個人向け国債 |
個人に限定した国債で固定金利型(3年・5年)と変動金利型(10年)がある。ここ10年など金利が低下している情勢でも、0.05%(年率)の最低金利保証がある。1万円から1万円単位で購入可能 |
利付国債 |
個人以外も購入可能な国債。年2回、半年ごとに利子が支払われる。中期(2年・5年)や長期(10年)、超長期(20~40年)など、個人向け国債に比べて期間が長い。 |
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新窓販国債 |
満期が来る前に売却ができる。(郵便局以外の)銀行などで5万円から、5万円単位で購入できる新しい個人向け国債。期限到来前に売却も可能。 |
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地方債
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公募地方債 |
都道府県や市町村など、地方自治体などが発行する債券。 |
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政府関係機関債 |
政府保証債 |
政府機関により発行される債券。元本、利払いを政府が保証している。 |
民間債 |
社債 |
一般事業債 |
営利企業、会社が資金調達のために発行する債券。一般的には、国債よりも利回りが高い。 |
転換社債 |
設定された株価に値上がりすると、債券を株式に転換できる権利が付いた社債。 |
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ワラント社債 |
債券に新株購入が可能な価格(行使価格)が設定されている。その価格を超えると有利な条件で新規に株式を取得できる権利が付いた社債。 |
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外債 |
サムライ債 |
外国の発行団体が円建て(額面は「¥」)で発行する債券。元本、利払いは円で行われるので、為替変動リスクは発生しない。 |
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ユ|ロ円債 |
海外市場で発行される円建ての債券。元本、利払いは円で行われるため、為替変動リスクは発生しない。欧州圏の「ユーロ」を意味しないことに注意。欧州圏以外のこの債券も「ユーロ円債」である。 |
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外貨建て債券 |
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国際機関債、 外国国債、 民間債 |
買い付けや償還、利払いが外貨建てで行われる債券。利回りは高いが、額面が外国通貨なので(「$」や「€」)為替変動リスクを伴う。 |
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仕組債 |
債券とデリバティブ取引を組み合わせたもの。為替レートや株価指数などを条件とし、利率や償還額が変動する債券。主に海外で発行される。投機性が高い。 |
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二重通貨建債(デュアル・カレンシー債) |
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利払いと償還が異なる通貨となる債券のうち、払い込みと利払いが同じ通貨で、償還通貨が異なるタイプの債券。払い込みと利払いが円建てで、償還が外貨建てのものが主流。償還時円高だと損をする可能性あり。 |
引用元:岡三証券『債券とは?』(一部引用)
<https://www.okasan.co.jp/start/beginner/bond/about.html>
一般的に債券の利息は
国≦自治体<企業
であり
円建て<外国通貨建て
リスクは
円建て<外国通貨建て
です。為替は変動するので、外国通貨建てで債券を購入すると、リスクがあります。
破綻の可能性は 国<自治体<企業であり 国債は一番利率が低いものの、破綻することがないので(国が破綻すれば債券で資産運用どころではない)、利率の高い定期預金的な運用になります。
それぞれの債券の特徴をよく理解してください。
まとめ 企業の経営に関することのご相談は「企業パートナー110番」へ
債券を購入して資産運用を図るにしても、自社で債券を発行するにしても理解しなければならないことがあります。
債券は株式と比較して低リスクですが、償還の義務もあり、資金調達した分、利息をつけて返済しなければなりません。
もし債券発行するのであれば専門家の知識、アドバイスが必要です。「企業パートナー110番」には債券の発行、購入どちらも詳しい専門家が揃っています。株式ではなく債券に注目している経営者の方は、一度ぜひ「企業パートナー110番」までお問い合わせください。