資金調達の方法 エクイティファイナンス(自社株発行)について
資金調達には金融機関からの借り入れを行うデットファイナンスと呼ばれる方法以外にも、自社株を発行することで資金調達をおこなう「エクイティファイナンス」と呼ばれる方法があります。このように「○○ファイナンス」と呼ばれる資金調達の方法は他にもいくつかありますが、今回はエクイティファイナンスに注目し、その詳細について徹底解説します。
エクイティファイナンスとは
エクイティファイナンスは金融機関などに対して行われる資金調達ではありません。エクイティファイナンスは会社の株式を新たに発行することで資金調達をおこなっていきます。そのため、「株主資本・株式」などの意味をもつ「エクイティ」という単語からエクイティファイナンスと呼ばれています。
エクイティファイナンスの大きな特徴は資金調達したお金については返済期限や義務が設けられていないことです。エクイティファイナンスでは株式に対する出資による資金調達ということになりますので、「お金を借りていつまでに、いくら返済する」という概念がありません。
デットファイナンスとの違い
資金調達の方法は「エクイティファイナンス」の他にも「デットファイナンス」という方法があります。株式を新たに発行することで資金調達をおこなっていくエクイティファイナンスに対してデットファイナンスでは金融機関などから資金調達をおこなっていきます。その他にもこれら2つの資金調達の方法に違いはあるのでしょうか。
デットファイナンスとの違い① 資金調達したお金の返済義務
先ほどエクイティファイナンスの「エクイティ」という単語は「株主資本・株式」という意味することをご説明しましたがデットファイナンスの「デット」という言葉は「借金・負債」などの意味をもちます。
そのため、資金調達することができたお金については、
・デットファイナンス → 返済する必要があるお金
・エクイティファイナンス → 返済する必要がないお金
ということになります。
デットファイナンスとの違い② 会計上の取り扱い・会計科目の性質の違い
資金調達したお金の返済義務に差があることから、資金調達することができたお金についてはそれぞれ性質が異なります。
返済義務がないということは純粋な自分たちのお金という取り扱いになります。反対に返済義務があるお金については一時的に使用することができるお金という取り扱いになります。
このことからそれぞれのお金については呼び名が異なり。会計上の区分(貸借対照表の表示箇所)も異なります。
具体的に次のように区分されます。
エクイティファイナンスによって調達したお金 → 自己資本(資本の部)
デットファイナンスによって調達したお金 → 他人資本(負債の部)
エクイティファイナンスの種類
エクイティファイナンスには次の4つの種類があります。
・新株予約権付社債
・公募
・株主割り当て
・第三者割り当て
これら4つにもそれぞれ特徴があることからしっかりと違いを理解しておきましょう。
エクイティファイナンスの種類① 新株予約権付社債(転換社債型 新株予約権付社債)
新株予約権付社債は新株(株式)を取得するための権利が付いた社債(借用証書)のことをいいます。株式を取得する権利と社債部分の両方が付いていることが特徴です。発行時には利率や償還期限が定められ、その他にも株式を取得する(株式に転換する)ための価格が定められています。
発行側の会社は発行時において社債(負債)として計上し、新株予約権が行使される際は社債(負債)を減少させ、その分純資産を増加させます。
このことから新株予約権付社債に関してはデットファイナンスのような一面も持ち合わせていますが、エクイティファイナンスの一種とされています。
エクイティファイナンスの種類② 公募
公募では新規で株式を発行することにより投資家から資金調達をおこなっていきます。公募で株式を発行する際は「時価」で発行することになるため、会社の時価が高ければ高いほど多額の資金調達することができる可能性が高くなります。反対に会社の時価が低ければいくら株式を発行しても多額の資金調達ができないことも特徴です。
このように公募では会社の時価によって資金調達することができる金額が変動することから「時価発行増資」と呼ばれることもあります。
エクイティファイナンスの種類③ 株主割り当て
株主割り当ては、新株発行時において既に株式を取得している株主に対して資金調達をおこなっていく方法です。具体的には株主の持ち株割合に応じて新株の割り当てが行われ、既に発行している株式をどれくらい所有しているかによって割り当てられる新株の権利が変動することが特徴です。
例えば20株に対して1株の新株割り当てを行う場合、
・100株所有している株主に対しては5株の割り当て
・200株所有している株主に対しては10株の割り当て
というように持ち株割合に応じて変動します。株主は新株が割り当てられた際にはあくまでも権利が割り当てられているだけであり、割り当てに伴い、新たな株式を必ず取得しなければならないということではありません。
エクイティファイナンスの種類④ 第三者割り当て
第三者割り当ては上記の株主割り当てのような株主のみを対象とするのではなく、株主以外の第三者も新株の割り当て対象とする資金調達の方法です。すでに株式を所有している株主だけではなく、不特定多数の第三者も対象としていることから多くの資金を調達することができる可能性が高くなります。
第三者割り当てにおいては会社の役員や従業員や取引先である会社など、会社にとって近い立場の人に対して行われることが多いことから「縁故割り当て増資」と呼ばれることもあります。
株価への影響について
資金調達したお金の返済義務があるデットファイナンスと違い、エクイティファイナンスは返済義務が無いことから非常に大きなメリットがあるといえます。
しかし、エクイティファイナンスの場合、株価に影響するという点に注意しなければなりません。エクイティファイナンスは言い換えると株式発行による増資です。そのため、株式を追加発行することにより1株あたりが持つ権利(議決権)が小さくなってしまいます。
また、株式の増資は株式の価値低下を招くことも注意が必要です。株式が増加することにより1株あたりの価値も低下し、結果として株価が低下してしまいます。
他にも、1株あたりの価値が下がるということは1株あたりの配当金額も下がるということになりますので、既に株式を所有している株主にとってはマイナス面での特徴もあります。このようにエクイティファイナンスでは株主との信用関係などが損なわれる可能性もあるため注意が必要です。
中小企業、非上場、ベンチャーでもできる?
エクイティファイナンスは中小企業や上場していないことを意味する非上場企業、起業したばかりのベンチャー企業なども利用することができます。しかし、エクイティファイナンスは多額の資金調達を可能としていますが、上記にて解説した特徴をしっかりと理解した上で慎重に検討していかなければなりません。
まとめ 資金調達についてのご相談は「企業パートナー110番」へ
エクイティファイナンスでは新株予約権付社債といった、より専門的な知識を必要とする場合があります。金融機関などから行う資金調達に比べ、返済義務がないことから非常に魅力的な資金調達の方法といえますが、エクイティファイナンスの中でもどの方法が適しているのかを判断していくことは非常に困難といえます。また、資金調達の方法はエクイティファイナンスの他にも様々な方法があります。自分たちにとってどの資金調達の方法が最適なのか悩んでいる方は、一度税理士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。