組織再編とは?目的や種類、メリットを解説
日々目まぐるしく変わっていく経営環境。そのダイナミズムに適応していくためには、会社の組織を見直すことも大切です。「組織再編」はそのための方法で、適切に組織再編できれば会社のダイナミズムを取り戻すことができます。今回は組織再編について多角的に解説していきます。
組織再編とは?
「組織再編」とはその名前の通り、会社の組織を改編し組みなおすことですが、業績の拡大や会社組織のスリム化などを目指して、これまでの会社組織のあり方を見直していきます。
これによって、事業の分割、統合や株式の交換、移転が行われます。結果的に会社の組織が大きく変わり、ダイナミズムが生まれます。
経営が一元化され、競争力が強化され、資金力が増強されるなど会社の基盤が大きく強化されるのが一般的です。
組織再編を行う目的
組織再編を行う目的を整理します。現状の経営に問題がなければ、組織再編をする必要がないからです。
組織再編の大きな目的は「経営資源の有効活用、事業強化」です。会社における「ヒト、モノ、カネ」という経営資源は限られており、これらを無駄なく有効活用していくことが経営を軌道に乗せるカギとなります。
組織再編を徹底することにより、会社の体力、持久力が増し、会社の存続や成長につなげることができます。
組織変更との違い
組織再編と似ているものに「組織変更」という改革手法があります。両者は以下のような違いがあります。
・組織変更:法人格の同一性を維持しながら、株式会社から合同会社、合名会社、合資会社という「持分会社」に変わること、あるいは、これら「持分会社」が株式会社に変わること。
・組織再編:複数の会社を一つに合併したり、会社が現在行っている事業を他社に譲渡したりする行為をいいます。具体的には、以下で言及するの4つのパターンになります。
ざっくりいうと、株式会社から別の会社形態に変更するのが組織変更、今の事業を維持しながら会社の事業や組織を大きく変え、場合によっては合併や分割をしていくのが組織再編になります。
今の事業を継続しながら、会社の内部を変える組織変更は対外的な始業活動への影響は少なくできます。しかし、それだけでは足りない部分があり、大きく変えたいので組織再編に踏み切るということです。
組織再編における手法とメリット
組織再編には、上記のように「合併、会社分割、株式交換、株式移転」というの4つの類型がありますので、覚えておきましょう。それぞれについて解説します。
合併
複数、多数の会社を1つの会社に統合することを指します。
合併の概要・手法
合併には「吸収合併」と「新設合併」の2つがあります。
A商事株式会社
B物産株式会社
株式会社Cコミュニケーション
という会社があったとします。
吸収合併はA商事株式会社を存続させ、B物産株式会社と株式会社Cコミュニケーションが消滅し、新「A商事株式会社」に吸収させるものです。法人としてA商事株式会社は存続します。
一方、新設合併はA商事株式会社、B物産株式会社、株式会社Cコミュニケーションすべて解散し、新しく「D開発株式会社」を新設するという方法です。
合併のメリット
合併は顧客の拡大、ネットワークの有効活用、経営の効率化、増資による対外的な信頼度工場などに寄与します。
各会社の資本を増やすことによる対外的な信頼度の向上などを目的に行われます。従業員・資本・債権・債務・株主などがすべて1つの会社に集約されます。
その結果、以下のようなメリットが生まれます。
・各社の部門、部署の統一によるコスト削減、効率化
・各社が持っていたネットワーク、顧客、技術力の有効活用
・増資による対外的な信頼度向上
合併のデメリット
一方で、合併による副作用も否定できません。
・従業員の増員による人件費等の増加
・合併した各会社の派閥争い
・増資により中小企業から「大企業」カテゴリになり、法人税等が増える(中小企業の優遇がなくなる)
会社分割
次に紹介するのが「会社分割」です。
会社分割の概要・手法
複数の会社を1つにまとめるのではなく、自社を複数の会社に分けることを指します。
A株式会社のある事業を分割し、新しく設立したB株式会社、あるいはすでにあるC株式会社に移転させます。
会社分割には2種類あり、前者の切り離した事業を新会社に移す「新設分割」、後者の既存の会社に移す「吸収分割」、それぞれのケースがあることを知っておいてください。会社単位ではなく、事業単位で別会社に承継できるので、不採算部門の切り離しや、逆に、好調な部門を独立させて別ブランドでやっていくなど多様な使い方があります。
最近の具体的な例でいうと、「いきなりステーキ」や「ペッパーランチ」を運営している株主会社ペッパーフードーサービスが、(新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い売り上げが低迷)「ペッパーランチ」事業を
株JPという会社に新設分割したことが話題になりました。
会社分割のメリット
・不採算事業の切り離しが容易
・逆に需要増が期待できる事業のブランディングに活用できる
・会社分割によって承継する事業資産には「消費税」がないなど税制上の優遇が受けられる
・買収資金は必要ない(株式を対価に譲渡が可能)、M&Aとは異なる
会社分割のデメリット
・会社分割に失望して優秀な人材が退職するリスク
・会社分割先の派閥争い、残った人、分社先に行った人との軋轢
・分社先の企業風土が変わってしまう
株式交換
株式交換という比較的新しい組織再編手法もあります。
株式交換の概要・手法
株式交換とは、1999年の商法改正で可能になった新しい組織再編手法です。相手先企業を子会社化する手法で、
A株式会社がB株式会社の株式をすべて交換して取得することで、B社を100%子会社化します。買収ではなく、株式を交換によってすべて自社のものにして、実質的に買収したのと同じような効果を得ることができます。
株式交換のメリット
・相手の株式を交換(取得)するだけでよいので、買収資金が要らない
・合併ではないので、100%子会社化した相手江には法人格があり、株主として経営に参画可能
株式交換のデメリット
・株式交換なので、親会社(例ならばA社)にB社の株主がやってくる。したがって、A社の株主構成が変わってしまう。
・投資家からマイナス評価を得て株価が下がるなどのリスクがある
株式移転
株主移転はさらにドラスティックな手法になります。
株式移転の概要・手法
株式移転とは、新しく会社を設立して、既存の複数会社の株式をすべて移転させ、既存会社を100%子会社化するものです。
A株式会社
B株式会社
の株を新設したC株式会社が100%取得し、完全にC株式会社のコントロール下に置くことができます。新設会社が取得するのは2社ではなく、3社、4社でも構いません。
「持株会社」(〇〇ホールディングス)を新しく作る際に、株式移転の手法がよく用いられます。これにより、グループ企業間の意志決定を迅速になります。
株式移転のメリット
・買収資金が不要でホールディングスを設立できる
・新規会社の設立なので、新しい社風を作れる
・人事や派閥等のもめごとが少ない
株式移転のデメリット
・投資家の期待度が低いと、株式移転前より株価が下がるリスクがある
・持ち株会社(ホールディングス)の維持費がかなり掛かる
適格組織再編とは?
組織再編には「適格組織再編」というものがあります。簡単にいうと、「一定の条件を満たしている会社の組織再編」で、税務上の特典があります。適格と表現するとそれ以外の組織再編が「適格ではない」「不適格」な印象を受けますが、そうではなく、条件を満たした「特別な組織再編」とご理解ください。
「適格組織再編」を行うと、法人税など税制上の節税につながります。組織再編によって、自社~移転した資産の譲渡損益を繰延、先延ばしにできます。
当年度に処理せず、後年、経費や損失として計上できるので、上手に譲渡損益を処理できれば、節税、税金対策になります。譲渡損が出た年は赤字だったので、損金を計上せ ず、儲かった年に繰延した損金を計上することで、課税所得を下げることができ、税金を減らせます。
適格組織再編について説明すると非常に長くなるので、こういう制度があるのだと知っておいてください。詳しくは、専門家に聞くとよいでしょう。
まとめ 企業再生についてのご相談は「企業パートナー110番」へ
組織再編についてはなかなか自分だけの理解では難しく、もし実行してしまった場合後戻りできなくなる可能性があります。別会社に事業を移して、それが行き詰まってしまったら、ひょっとしたら組織再編せずに続けていた方がよかったという結果にもつながりかねません。
しっかり熟慮の上で実行すべきですが、そのためには専門家のアドバイスが不可欠です。「企業パートナー110番」には、会社の組織再編や分割、合併などに詳しいプロフェッショナルが揃っています。
大きな決断になるので、それをサポートする「軍師」が必要です。企業パートナー110番のプロフェッショナルを軍師にしていただき、貴社の重要な組織再編のお手伝いをさせてください。まずはご相談お待ちしています。