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債権放棄について

Debt waiver

皆さんは取引先との間で発生した債権が回収できなくなった場合、どのように処理を行えばよいのか正しく理解できていますか?回収することのできない債権がある場合には適切な処理を行わなければ自分が損をしてしまう可能性もあります。

そこで今回は、

・債権放棄とはいったい何?

・債権放棄を行うと債権者、債務者にどういった影響を与える?

・債権放棄を行う場合の具体的な手続き方法は?

これらの疑問について詳しく解説していきます。記事の後半では、具体的な会計上の仕訳処理についても取り上げていますのでご参考としてください。

 

債権放棄とは

債権放棄は言葉の通り「取引先に対する債権を放棄すること」です。債権者は債務者に債権を放棄する意思表示を行うことで、お金をもらう権利を失います。お金を支払う義務がある債務者は債権放棄の意思表示を受けることにより、支払う義務が免除されます。

 

その為、債権者側からの視点では「債権放棄」、債務者側からの視点では「債務免除」と放棄した側なのか、免除を受けた側なのかで言葉が異なります。

また、会計上では

「 債権を放棄する = 貸し倒れとして処理する 」

ということになりますので、会計上及び税務上の適切な処理が必要になります。

 

債権放棄のメリット、デメリット

債権放棄は取引先から本来回収するはずだったお金を放棄するということになるため、債権者にとっては非常に大きな損失となってしまいます。ここで気になるのは「債権放棄を行ったことによる影響は他にもあるのか」ということではないでしょうか。ここでは債権放棄のメリットとデメリットそれぞれについて解説していきます。

 

債権放棄のメリット① 放棄した分は損失として費用計上することができる

債権放棄は債権者からすると大きな損失です。債権を放棄することで生まれた損失部分は「貸倒損失」として費用計上することができます。貸倒損失として費用計上することにより会社の利益から差し引くことができるため税金を少なくすることができます。しかし、貸し倒れとして処理するには一定の要件を満たしていなければいけない為、貸し倒れとして処理することができるかを事前に調べておく必要があります。

 

債権放棄のメリット② 株価を下げることができる

法人の事業承継などの場合は承継者に株式を移動させることで行われます。この株式を移動させる場合には会社の資産や負債、純資産などを参考に株価が計算されるのですが、基本的には会社の資産や利益が高ければ株価は上がっていきます。債権放棄を行うということは資産を減少させ、損失を計上させるということになるため、会社の株価は下がるということになります。

株式を個人に移動させる場合は金額によっては受贈者に贈与税が発生する場合があります。株価が下がったタイミングで株式を移動させることで事業承継時などにおいても贈与税などの税金を払わなくてよい範囲内で株式を移動させやすくなります。

 

債権放棄のデメリット① 資金を回収することができなくなる

債権放棄の最大の特徴はこのお金を回収することができなくなるという点です。上記では債権放棄をした場合、損失として費用計上することができることや、株価を下げるという点をメリットとして挙げましたが、どちらもお金を回収できなくなった上での話になります。特に債権放棄の金額が大きい場合は、それだけ資金繰りを悪化させる可能性が高いということになります。

 

要件を満たしていなければ費用として計上できない

貸し倒れとして処理するには一定の要件を満たす必要があります。貸し倒れ損失を計上する場合には次の3つの種類があります。

「法律上の貸し倒れ」

「事実上の貸し倒れ」

「形式上の貸し倒れ」

 

法律上の貸し倒れとは、取引先が私的再生手続きや法的再生手続きなどの債務整理手続きによって債務が免除された場合の貸し倒れのことを指します。

事実上の貸し倒れとは、取引先が廃業した場合や、債務者が死亡したことにより債権を回収することが不可能であることが明らかな場合の貸し倒れのことを指します。

形式上の貸し倒れとは、取引先との取引停止日または、最後に債権を回収したその日から1年以上債権を回収できていない場合における貸し倒れのことを指します。

また、取引先が遠方にいるなど回収するためにかかる費用よりも債権額が小さい場合の貸し倒れのことも形式上の貸し倒れに該当します。

この3つの貸し倒れの要件に該当しなければ貸倒損失として費用計上することはできません。これらの判断は自分たちで行っていかなければならないことからも、貸し倒れとして処理する際には慎重に行う必要があるといえます。

 

債権放棄の手続きの仕方

債権放棄を行えるかどうかは上記の3つの貸し倒れに該当するかによって判断できますが、その後は適切な手続きを行わなければ貸し倒れとして処理することはできません。しっかりと手続きの流れを把握しておくことでスムーズに債権放棄を行うことができます。

 

債権放棄の手続き① 債務者へ請求書の発行など催促を行う

貸し倒れとして処理する上で大事なことは「債権の回収努力をしていたこと」です。

そのためには請求書などを定期的に発行することや、催促の連絡を定期的にとっていたことなど回収努力をしていた実績が必要になります。

 

債務者の状況確認

貸し倒れとして処理するには債務者の状況も非常に重要になります。その為、債務者の財政状況や事業状況などを確認しておく必要があります。しかし、債務者の状況を確認することは簡単ではありませんので、この部分が一番手間のかかる作業といえます。

 

通知書の発行

債権放棄は債権者から債務者への意思表示を行わなければなりません。意思表示の方法としては「債権放棄通知書」と呼ばれる書類を債務者に郵送することが一番といえます。

債権放棄通知書はその時に債権放棄の意思表示を証明する重要な書類のため、書類の作成日も明確にしておく必要があります。そのためには法務局で「確定日付印」をもらうことをおすすめします。確定日付はその日にその文書が証明するために日付を確定させるものです。これによりその日に文書が作成されたことを証明することができます。

また、債権放棄通知書作成後は通常の郵送方法ではなく、「内容証明郵便」にて郵送することをおすすめします。内容証明郵便は郵便物の差出人と受取人を証明することができる制度となっており、郵便局側が文書の写しを保存することが特徴です。そのため、郵送する際には差出人用、受取人用、郵便局保管用の3通準備する必要があります。

この債権放棄通知書は税務調査があった際や税務署からの問い合わせの際に必要になる場合もあるため、必ず無くさないように保管するようにしましょう。

 

債権放棄の仕訳について

債権放棄を行う際の仕訳については下記のとおりです。

 

借方

金 額

貸方

金 額

貸倒損失

××××

債権(売掛金・貸付金など)

××××

 

 

まとめ 経営改善についてのご相談は「企業パートナー110番」へ

債権放棄を行い貸し倒れとして処理するには様々な手続きと準備を行わなければなりません。貸し倒れの処理を素人が自己判断で行うことは非常にリスクがあるともいえ、最悪の場合、税務調査において貸倒損失が否認される恐れもあります。

代金を回収することができず、損失として費用計上することもできないとなれば債権者にとってはマイナス面しかありません。そうならないためにも債権放棄を検討している場合などは税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

また、債務者にとっては債務を免除してもらうことで資金繰りの改善や経営改善に役立てることができます。事業を再生させるための方法の1つとして債務免除は非常に有効な方法であるといえます。債務者側も事業再生や経営改善を検討する場合には早めに税理士に相談しましょう。

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