業務提携とは?メリットや注意点を分かりやすく説明
ある会社とある会社が「業務提携」した。というニュースをよく耳にします。業務提携、イメージは何となく湧きますが、実際にどのようなものなのかよく知らない、という方もいらっしゃるはずです。今回は「業務提携」について詳しく説明します。みなさんの会社も業務提携で経営を拡大する余地があるかもしれません。
業務提携とは
よく耳にする「業務提携」とは、1社単独では達成が難しい政策や事業を、独立した複数の会社が経営資源(お金や工場、ノウハウなど)を出し合って協力関係を築き上げて、そのミッションを達成するというものです。
1人では不可能なものも数人集まれば可能になる、という考えのもと、協力関係を持った会社同士で解決するのは大きなやりがいにつながります。
業務提携の種類
一言で「業務提携」といっても、それには濃淡があり、度合いや内容によって3種類に分けられます。その3種類、技術提携、生産提携、販売提携、それぞれについて解説します。
A社とB社が業務提携して事業を展開することを例として考えます。
技術提携
A社が持っている技術資源(知的財産権、特許、ライセンス、ノウハウなど)をB社に有償で提供し、B社がそれを使って開発・生産などを行うことを「技術提携」といいます。
知的財産権を提供する「ラインセンス契約」と、特定の技術または製品の研究開発を分担、協力して行う「共同研究開発契約」に分かれます。
両者がお互いに独自の技術を提供することで、新しい商品やサービスを生み出していきます。
A社が持っているあるタッチパネルのライセンスを使って、B社が新しいゲームを作るなど、日常的にさまざまなものが技術提携によって生み出されています。
生産提携
A社がB社に生産方法の全部または一部や仕様を提供します。B社はその商品を生産する技術やノウハウはあるので、A社指示の商品を生産できます。
A社はB社の生産力を自社の管理のもとで活用できます。要は「OEM」や「ODM」が生産提携に該当します。
コンビニやスーパーの「プライベートブランド」がありますが、それは生産提携によってA社(コンビニやスーパー)がB社(メーカー)と生産提携したものです。プライベートブランドの商品、例えば、A社コンビニブランドのポテトチップスやカップ麺は、もともとB社に同じ(B社名義の)商品があるのです。それをA社のブランドとして販売することで
A社:新しく生産ラインを作らずに売れ筋商品を作れる
B社:自社の商品をA社のブランドで多く売ることができる
A社もB社もwin-winの関係になれます。
販売提携
製品の開発力・供給力が高いA社と、製品の販売力に優れたB社が業務提携します。A社の製品をB社の販売資源(販売網・人材・ノウハウなど)を活かして売ることが販売提携の目的となります。
代理店(保険など)、販売店(街の電気店など)、フランチャイズ契約(コンビニや飲食店)などが該当します。
B社はA社に代わってブランド力や知名度を生かして製品を販売します。B社がしっかり顧客を開拓すればA社もB社も儲かる仕組みです。
これら3つの業務提携によって、A社とB社それぞれの長所を生かした営業を行っていきます。
業務提携のメリットとデメリット
業務提携をするということは、メリットがあるということですが、逆にデメリットもありそうです。業務提携のメリットとデメリットについてまとめてみました。
業務提携のメリット |
業務提携のデメリット |
リスクの分散 |
経営資源、ノウハウ、内部情報の流失 |
コストの削減 |
関係の希薄化 |
資金がそれほど必要ではない |
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契約関係を比較的簡単に解消できる |
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双方の強みを生かせる |
業務提携は次に説明する資本提携やM&Aと異なり、資本の移動を伴わないので、気軽に連携できます。ある業務提携が終われば、元のビジネスライクな関係に戻れるので、資本提携や業務提携のように自社の経営にまで関与されるリスクが減ります。
相手の株式を購入することもないので、費用も掛かりません。今ある、双方の設備やブランドをそのまま生かす方法なので、コスト面でもリスクヘッジできます。
また、OEM製品が失敗しても、それを製造終了にすれば済むだけなので、設備投資が無駄になることもありません。もともとの製品を作る状況に戻ればいいだけです。
デメリットとして大きなものは、情報やノウハウの流失です。どうしても経営資源や内部情報を相互に公開する必要があり、そこから情報が筒抜けになる可能性もあります。業務提携以外のことに使うことが許されませんが、意図しない盗用などがあるかもしれません。
緩い提携方法だからこそ、締めるところは締めないと大きなリスクになってしまいます。
業務提携と資本提携・M&Aの違い
業務提携と似た外面に「資本提携」「M&A」があります。業務提携とそれらの違いについてまとめました。
業務提携はA社とB社間で資本の移動は伴いません。A社、B社が協力してそれぞれ得意な分野でがんばって1つの製品を生み出すというスキームです。
一方、資本提携やM&Aは資本の移動を伴います。つまり、A社がB社の株式を購入し、B社に資本を供出するだけではなく、B社の経営にも影響力を行使できるようになります。
資本提携の場合は、経営権にまで影響を及ぼすことはありませんが、M&Aは実質、会社(この場合はB社)を買収したり、吸収合併したりすることになります。こうなると、業務提携の「提携」どころではなく、会社そのものの存在に影響があります。
A社とB社が対等ではなくなるわけで、そこまで行かず、両者のいいところを活かす仕組みとして業務提携が広く浸透しています。
どちらかを強い方が助けるのではなく、双方の強みを生かす方法が業務提携です。
業務提携の流れ
業務提携を行うための流れ、フローを確認しておきましょう。
大きな流れは以下になります。
1.業務提携する事業やターゲットを確認する
2.両者のゴール、達成目標を明確にする
3.役割分担、責任分担、業務フローなどを明確にする
4.資本提携によって生じた利益配分、費用負担を明確にする
5.業務提携契約書を作成する
事前にさまざまなことを詰めて、最後に業務提携の契約書を作成することがポイントです。契約書締結後問題が生じると、トラブルに発展するリスクがあります。利益が出た場合も損が出た場合も、双方が納得できる契約内容を最初から詰めておくことが大切です。
また、業務提携は資本提携やM&Aと比較して緩い連合体となるので、双方の最終目的やビジョンが不一致になりがちです。双方が目指すものが異なると、せっかく業務提携したのに結果が出なくなってしまいます。
その辺りの事前の協議を何より優先させて行うことが大切です。
業務提携を行う際の注意点
最後に業務提携を行う際の注意点をまとめておきます。
- ・提携する業務内容と範囲を明確にする
- ・知的財産権の帰属を明確にする
- ・競業避止義務をしっかり守る
- ・秘密保持契約をしっかり締結する
- ・契約期間を明確にする
- ・契約解除の条件を明確にする
業務提携の相手は友好的な会社のはずですが、実際には完全な「善意」である保証はありません。秘密保持契約や競業避止義務を明確にすることで、他社と「出し抜く」リスクを減らしておきましょう。
知的財産権も大切な財産です。自社のライセンスを、業務提携相手に濫用されては堪ったものではありません。
業務提携関係はビジネスパートナーであり、資本提携やM&Aのように経営権も含めて双方が緊密になることはないドライな関係です。契約期間や契約解除条件を明確にすることで、ビジネスパートナーとして今後もやっていくことができますし、トラブル防止にもつながります。
まとめ 企業の経営に関することのご相談は「企業パートナー110番」へ
業務提携は資本提携やM&Aと比べて、資本移動がなく、比較的ハードルが低い経営安定化策です。業務提携した会社同士の長所を生かすことで、自社だけではかなわないことも可能になります。
しかし、事前の協議や契約書の締結、そもそもどの会社と業務提携すべきなのか、その会社とコネはあるのか、など越えなければならないハードルが多いです。
自分の力だけでは業務提携契約までたどり着くのはなかなか大変です。そういうときこそ専門家を頼ってください。
「企業パートナー110番」には業務提携に詳しい専門家が多数おり、適切なアドバイスをさせていただきます。まずご相談ください。