事業再生・企業再生について(法的整理を行う直前の会社の事業再生の方法)
事業再生、企業再生とは、負債が資産よりも多くなってしまっていて、債務超過になっている企業、経常的に赤字になってしまっていることから、資金繰りが厳しくなり、存続が危ぶまれる企業を、正常な企業に戻すことを言います。
再生手法には、民事再生、会社更生等の法的整理の他、銀行融資のリスケジュール、抜本的な損益構造の見直し、中小企業再生支援協議会等による私的整理等があります。
弊社では、民事再生、会社更生等の法的整理を行う直前のところで抜本的な損益構造の見直し、銀行との融資の交渉、資金繰りの改善等を行うことにより、存続が危ぶまれている企業を正常先に戻すことを数多く行ってきました。
今回はそのような法的整理を行う直前の会社の事業再生の方法を記載したいと思います。
1、ヒアリング調査
弊社は、事業再生案件を受注しましたら、まずは現状を詳細に把握することから始めます。
業績不振で困窮している企業の場合、社長自体が、自分の会社の現状が分かっていないケースが多いです。したがって、まずは一から徹底的にヒアリングをして、弊社が現状を把握するとともに社長に現状を理解していただくことからスタートします。
ヒアリングする具体例は以下の通りです。
・何をしている会社なのか?
できるだけ具体的に聞きます。
弊社が、素人の第三者に依頼主のことを説明できるレベルまでヒアリングします。
・従業員構成は?
組織図を作っていないケースが多いので、ヒアリング内容をもとに組織図を弊社で作成します。
・従業員の中でのキーマンは?
社長だけが意識を変えても実際に動くのは従業員です。
従業員の中でリーダーとなる人、具体的に指示をする人等がいるかどうか確認します。
・取引先は?
取引先リストが作られていないケースがほとんどです
ヒアリングをもとに取引先リストをこちらで作成します。
以上のようなことを、隅から隅まで時間をかけてヒアリングを行います。
2、財務諸表分析
会社の状態等のヒアリング調査した後は、過去3期分の貸借対照表、損益計算書の分析をして、数字上からわかる問題点を探ります。過去3期分の貸借対照表、損益計算書の分析を行うと、業績不振の問題点がどこにあるのかある程度把握することができます。弊社では数多くの企業の分析を行っていますが、業績不振の原因は、大別すると下記の5つに分類されることが多いです。
・売上高が不足しているケース
・粗利益が著しく悪いケース
・人件費が多すぎるケース
・その他固定費が多すぎるケース
・P/Lは良好だが、借入金返済に追われて資金繰りに困窮するケース
上記の1つに該当することにより、事業再生が必要になっている企業、1つのみではなく、2つ、3つなど複数該当するケースもありますので、その企業がどのような理由で事業再生を必要としているのかその原因を明確化します。
3、対策案の提示(売上高が不足している場合)
上記、1、2により、事業再生が必要な原因が「売上高が不足している」に該当する場合、1つに「売上高が不足している」ことが原因と言っても、
・取引先が一社(数社)に集中している場合
・見積り、問合せは多いが受注につながらない場合
・受注はできるが継続できない場合
・そもそも受注(問い合わせ)が来ない場合
・そもそも実力不足
など原因は様々です。まずは「取引先が1社(数社)に集中している場合」の対応策について、記載したいと思います。
取引先が一社(数社)に集中している場合の企業は、以下の特徴があることが多いです。
・社長が消極的の方が多い(職人タイプ)
・社長が営業の方法を知らない
・社長以外は全員作業員、経理担当
・創業数十年の歴史のある会社
・会社としての技術力等の本来の実力は十分にある
・大企業と専属契約、請負契約をしていて、それに満足している
以上のケースは、建設業や製造業によくあるパターンです。
この場合は、悪い言い方をすれば大企業にいいように使われているパターンとも言えます。大企業側は、大企業との取引がなくなれば、その会社の継続が困難なことを分かったうえで、継続できるギリギリの金額まで価格を抑えて、生かさず殺さずの状況を続けて取引を継続しようとしてきます。
長年、このような大企業としか取引していない会社の社長は、とりあえず食べていけるからいいかと現状維持の状態を続けた結果、大企業の業績が悪くなって受注が減ったり、大企業から見切りをつけられたりして、その企業の業績が厳しくなり、事業再生にいたるケースが多いと考えられます。
また、このケースで厄介なのは、長年同じ取引先としか仕事をしていないため、社長が営業の方法が分からなくなってしまっていることです。
同時に社長自身、職人タイプであり、コミュニケーションが苦手だったり、うまく表現することが苦手だったりします。
ただし、会社が提供するモノやサービスは確かな品質のものが多いというケースが多いのもこのパターンです。
弊社としては、その会社の実力を活かすアドバイスを以下のように行っていきます。
・新規取引先の開拓
売上構成比率は1社当たり30%までに抑えべきです。その為には新規取引先を獲得することは必須になります。その中で、営業がなかなか難しい社長にご提案することは、
➀営業担当者を採用
➁営業方法のセミナー、レクチャーを受ける
➀についてですが、長年営業をされてこなかった方にいきなり営業をするということはなかなか難しい話です。であれば、それを専門の方を採用してやってもらいましょうという考え方です。人材については、その企業の業界に精通している方を探すことになりますが、求人情報サイトへの登録やお知り合いへのお声がけは当然にしていただきます。
また、銀行などのビジネスマッチングのシステム、民間が行っているビジネスマッチングシステムを利用し、外注という形で営業代行を行っている会社を探します。
➁についてですが、➀は人材を雇い入れた場合、給料という固定費が発生しますし、外注で営業代行を頼むとそれなりの報酬のお支払いをする必要がでてきます。そのような支払いは厳しいという企業については、②の社長や社員が営業方法のセミナー、レクチャーを受け、社長や現在雇用している社員が営業を行う方法を採用するべきです。
この方法もセミナー代やレクチャー代など経費が発生していまいますが、一時的なものであり、それ以外は余分な経費は、発生しません。
・ホームページ作成
このケースの企業は、会社にホームページがない、あるいはあっても更新が全くされていない飾りだけのホームページであることが多いです。
社長自身が営業が苦手であるのであれば、ネットからの集客を狙うことは外せません。
何をしている会社なのか、どういう実績があるのか、受注までの流れは?等ホームページを見れば分かるように作成していきます。また、スタッフブログやフェイスブック等のSNSの活用も提案します。
今回のコラムでは、以上になります。次回は、続きの「受注はできるが継続できない場合」から記載したいと思います。
監修者
ひとこと
周りに気軽に相談できない、資金繰りや今後の経営方針などについて私達企業パートナー110番に相談してみませんか。 悩んでいることを社長がお話ができるパートナーになりたい、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
氏名
山取 大希
資格
:税理士 (関東信越税理士会川越支部 登録番号 128770号)
:事業承継士
:一般社団法人 事業と資産を承継させる会 代表理事
:川越一番街商業協同組合 顧問税理士