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事業再生ADRとは何?わかりやすく解説

会社の事業が思うように軌道に乗らず経営がうまくいかない場合には事業再生を図る必要がありますがその方法は様々です。一般的なものとしては会社更生法や民事再生法、破産法などによる法的な手続きにより問題を解決していくことですが、裁判所などが間に入ることから手続きに非常に手間がかかってしまいます。そこで事業再生ADRを活用することで手続きを簡素化することができます。

事業再生ADRとは

ADRという言葉はAlternative Dispute Resolutionという言葉の略語で言葉の意味は裁判外紛争解決手続きを意味します。言葉は難しく感じるかと思いますが簡単に訳すと「裁判などの法的手続き以外の方法で問題を解決しましょう」ということです。

本来であれば会社更生法や民事再生法、破産法を活用して事業再生を図る場合、裁判所などの公的機関での手続きがあり非常に手間となってしまいますが、事業再生ADRの場合は裁判所などの公的機関への手続きをせずに、当事者間だけで話し合いなどを行い問題解決していきます。

事業再生ADRの適用事例

事業再生ADRは平成19年に施行されたものですが、平成20年から約5年間での事業再生ADRの手続きを申請した企業は数多くあり上場企業だけでも16社ありました。有名な企業でいえばエドウィンや日本航空、アイフルやルートインジャパンなどが申請をおこないました。申請した企業は主に取引先への債務免除や人員削減などの経費削減により債務超過状態の解消などをおこなうことができ、結果として収益の回復や黒字への転換などがありました。

エドウィンの事例でみると平成23年におこなった資産運用が思うような結果を生まず、結果としてその資産運用は失敗し多額の損失を出してしまいました。そこで事業再生ADRの申請手続をおこない、当時の大口取引先であった伊藤忠商事がエドウィンへの多額の支援を行い子会社となっています。出資の金額は約300億円ともいわれ、この資金により返済等をおこなうことができエドウィンは再建することができたといえます。

手続きの流れ

事業再生ADRを申請する会社は法務大臣の認証を受けている事業再生ADRを取り扱う事業者に手続きの申し出をおこないます。申し出をおこなった後は「事業再生計画案」と呼ばれる現在の状況に至った経緯や今後の事業再生を図るための方法や債務の弁済方法などを記載した計画書、現在の貸借対照表や損益計算書、弁済計画書などを作成します。

ここで作成される計画書の内容に不明確なものがある場合や具体的な今後の方針などが記載されていなければ債権者からの手続きの同意を得ることができない可能性が高くなるのでしっかりとした内容の計画書を作成する必要があります。

計画書等の書類を作成後は事前審査があり、審査を通過すると債権者へ債権の回収業務や更生手続きなどをおこなわないように通知をしなければなりません。通知を行った後は債権者会議が開かれ先に作成した事業再生計画書などの書類の調査がおこなわれ、記載されている事業計画や弁済計画が実現可能なものなのかを確認していきます。債権者会議は1回だけではなく、2回、3回と繰り返されることがあります。

複数回にわたり開かれた債権者会議の最後には事業再生計画案の決議がおこなわれます。最終的に事業再生ADRの手続きを進めるためには債権者全員の同意が必要になるため、債権者全員からの同意が得られなければ事業再生ADRのような私的整理ではなく、裁判所へ申し立てを行い事業再生をおこなう法的整理の手続きに移行することになります。

 

事業再生ADRのメリット

・公表が不要

会社更生法や破産法などによる法的手続きをおこなう場合には公告と呼ばれる新聞や文書などにより公表する必要があります。事業再生ADRでは公告をおこなう必要がないので非公表での事業再生が可能です。どうしても事業再生をおこなっていると聞くと事業が順調に進んでおらず経営がうまくいっていないと印象づけてしまうのでそれらの風評被害などによる事業価値や会社価値の毀損を防ぐことができます。

・商取引債権者との取引は継続したままでよい

会社更生法や破産法などによる法的手続きの場合は日々の取引によって発生する債権はすべて弁済が禁止となりますが、事業再生ADRの場合は金融債権者(金融機関等)を相手として手続きを進めるため、事業に伴い発生する商取引債権者(営業取引先)を巻き込むことがありません。それにより従来通り事業は継続しておこなうことができるため商取引の円滑な継続が妨げられることがありません。

・つなぎ融資が容易に受けられる

事業再生手続きを行っている場合にはその手続き中の資金確保も重要になります。事業再生ADRの場合はつなぎ融資と呼ばれる一時的な融資に対する連帯保証や、債権者会議において債権者全員から同意が得られない場合における法的整理への移行時において、つなぎ融資に対する優先弁済が設定されているため、比較的容易に融資を受けることができます。

・法的整理への移行が可能

債権者会議において債権者全員からの同意が得られなければ事業再生ADRをおこなうことができません。そのような場合には法的整理へと移行することになるのですが、その際には裁判所が手続きを引き継ぐ形となるため裁判所側もこれまでの事業再生ADRでおこなってきた調整結果を尊重し円滑に手続きを進めることができます。

・債権放棄による損失を損金計上(経費算入)することができる

通常債権放棄等を行う場合には一定の要件を満たさなければ貸倒損失として経理上経費にすることはできません。しかし事業再生ADRによる債権放棄をおこなった場合は原則として法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付等)の取り扱いにより、債権放棄による損失のすべての金額を経費に算入することができます。

・メインバンク以外の金融機関との交渉がおこないやすくなる

事業再生ADRの場合に作成される事業計画書などはメインバンクなどの金融機関などが主導で作成せずに中立の立場となる専門家と作成していくことになるため、メインバンク以外の金融機関との交渉がしやすくなります。これは法的手続きによる法的整理の場合と同じ公正さをもって作成される事業計画書となっていることから信頼を得やすいということが影響しています。

・信頼性が高く法的再生と同水準の再生が図れる

事業再生ADRの場合は法的再生をおこなう専門家と同レベルの監督者がおこないます。その監督者の下で事業再生ADRの手続きがおこなえることから高い信頼を得ることができ、法的再生の場合と同水準の再生を図ることができます。

 

事業再生の相談は「企業パートナー110番」へ

事業再生ADRは法的再生のように裁判所などの公的機関への手続きが不要であることから比較的容易に手を出しやすい事業再生の方法ですが、あくまでも法的再生のような面倒な手続きが不要であるということだけのものであり、事業再生という最終目的は全く同じとなります。どちらの方法の場合においても現在の状態に至った経緯や今後の事業計画などを具体的に考察しなければ債権者から同意を得ることはできません。事業再生というのは債権者に迷惑をかけるものですから、その債権者を納得させることができる事業計画というのはある程度の内容の濃さがなければなりません。そういった場合にはやはり自分たちだけでそれらの書類を作成することには限界があります。そのため事業再生ADRをはじめとする事業再生手続きを専門におこなっている事業者に相談し、どの事業再生の方法が自分たちにとって適しているのかを判断していくことが重要になります。

監修者

ひとこと

会計業界に数十年おり、税務、財務のアドバイスを得意としています。的確なアドバイスにより、数十社の黒字化に成功しています。まずはお気軽にお問い合わせください。

 

氏名・資格

桒原 賢志 ・ 税理士

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