会社の破産に関して
会社や事業の経営状況が悪くなると買掛金や未払金といった債務が膨らみ、現金預金や売掛金などの資産の金額を超えてしまいます。このことを債務超過といい会社などが破産する理由の1つです。
今回は破産に伴う手続きについてご紹介していきます。
破産とは
破産という言葉の一般的な意味は所有している財産をすべて失うことをいいます。事業を行っていると債務の返済が困難となり、事業自体の継続が困難になってしまう場合もあります。
そうなった場合に、所有している財産をすべて手放すことを条件に現在抱えている債務を免除してもらう必要があります。この手続きを破産手続きといい、世間では自己破産と呼ばれることが多いです。
破産手続きは具体的にどういうことをしているのかというと、まず破産手続きを行う債務者の所有している財産をすべて差し押さえ、競売などの方法で現金や預金に金銭化します。これを換価処分といい、換価処分して金銭化された資金を債権者への弁済に充てる手続きのことをいいます。
破産の手続き方法
破産手続きは債務者の債務状況や所有している財産の種類やその多さによって必要な手続きや準備しなければならない書類など異なります。
また、手続き完了までの期間も大きく異なることもあります。
その為、破産手続きにはどれほどのボリュームがかかり、どれぐらいの期間を有するということは実際に手続きを始めなければわかりません。
しかし、手続きのおおまかな流れを把握しているのと把握していないのでは、手続きにかかる時間は大きく変わってきますので、いざという時に円滑に手続きを進めることができるようにしておくことが大事です。
破産手続きの流れ① 事前準備
破産手続きには基本的には裁判所を通じておこなう為、ほとんどの場合が法律事務所など弁護士に業務を依頼することになります。
破産申し立てを裁判所へ行う際のタイミングや段取りについては業務を依頼する顧問弁護士と事前に打ち合わせを行います。
法人格の場合は会社と同時に経営者自身の破産手続きも同時に行うことになる為、事前の打ち合わせが非常に重要になります。
破産手続きの流れ② 債権者等への通知
破産手続きが始まると基本的には債権者と債務者の直接的な連絡はとれなくなります。
その為、債権者や金融機関などに破産手続きを弁護士に依頼したことや、今後の連絡等についても弁護士に行ってもらうよう通知文を送付しなければなりません。
また、通知文の送付と同時に現在行っている債務などの支払いも停止しなければいけません。
通知文を発送後は基本的に弁護士が債権者との窓口になるので債務の催促などが行われることはありません。
この段階で気を付けなければならないことは預金口座の凍結があります。金融機関は通知文が届くと債務者の預金口座を凍結します。その為、通知分を発送する前に預金から出金しておくことをおすすめします。
破産手続きの流れ③ 申し立てと手続きの開始
申し立ては近くの裁判所で行いますが、この時には破産手続開始申立書を提出しなければなりません。
弁護士に業務を依頼している場合には弁護士がこの書類は作成してくれますので債務者が作成する必要はありません。
破産手続開始申立書の提出を受けた裁判所は破産管財人として外部の弁護士を指名します。
破産管財人は破産手続きを行う上で債務者が所有する財産の管理や処分を行うことができる権利を持っている人のことを指します。
裁判所は申立書の提出からおおむね1週間ほどで破産手続き開始決定を行い手続きが本格的に開始されます。
破産手続きの流れ④ 財産の換価処分
破産手続き開始後は破産管財人である弁護士と、債務者が業務を依頼した弁護士、そして債務者本人の3者間で今後の予定や財産の換価処分などについて打ち合わせを行います。
換価処分については破産管財人が進めていきます。
破産手続きの流れ⑤ 債権者集会の開催
破産手続き開始から約3か月頃になると裁判所で債権者集会が開催されます。
この集会では財産の処分を執り行っている破産管財人から現在の状況などが説明されます。
この集会には裁判官をはじめ、書記官や破産管財人、債務者や顧問弁護士、債権者が出席しますが債権者の出席は珍しく、出席者がいる場合でもその数は非常に少ないです。
この債権者集会が開催される回数は破産管財人の業務進捗具合によって異なります。
1回目の段階で破産管財人が財産の換価処分や債券調査といった業務を完了していれば、債権者集会は1回で終了します。
債権者集会を開催することができる回数には制限はありませんので、破産管財人の業務が完了するまで何度も開催されます。
破産手続きの流れ⑥ 配当手続き及び債務者の免責の決定
破産管財人の換価処分などが完了すると換価された財産分のお金を債権者へ配当されます。
この手続きも破産管財人が行う為、債務者が行う作業は特にありません。ただし、財産の換価処分によって配当することができる資金が回収できなかった場合には、配当手続きは行われずに破産手続きが終了します。
債務者が法人格である場合には経営者である個人も同時に破産手続きを行う場合がありますが、その場合には、この配当手続きが完了する頃に個人の免責も行われます。
破産の特徴は?
破産手続きは所有する借金や未払金などの負債だけではなく現金や預金、所有する資産も清算することを目的に行われる法的な手続きです。所有する資産は基本的に換価処分されますが、生活する上で必要最低限の財産は処分されないことも特徴です。その為、当然のことながら破産手続きにはメリットとデメリットが存在します。
破産のメリット
・破産手続きで賄いきれなかった残りの債務が免責される
・債権者からの取り立てなどが行われなくなる
・個人の破産手続きの場合、給与の差し押さえが停止される
破産のデメリット
・ブラックリストに10年間登録され信用度が極端に落ちる
・生活する上で必要な最低限の財産を除く全ての財産を処分される
・自己破産を行ったことが官報に公告されてしまう
・破産手続き中は居住制限がかかる
このようにそれぞれメリットとデメリットがありますが、あくまで自己破産は債務者にとって上記のような大きなデメリットが生じますが、破産手続きの目的には債務者の経済的な救済も含まれる為、破産手続き完了後の社会的復帰に対して大きな障害が生じるようなデメリットがないことも特徴の1つであるといえます。
破産をするべき人はこんな人
毎月のローンなどの返済が家計を圧迫してしまい、日々の生活に支障が出てしまっている場合や金融機関や消費者金融、その他のカード会社からお金を借りることができない場合、そして闇金や個人借入、返済に充てる為の過重労働などを行っている場合には破産手続きを検討する価値は十分にあります。破産手続きを行うことで現在抱えている問題を解決し、状況改善ができる可能性もあります。
破産について「企業パートナー110番」へ
破産手続きは法的整理の1つであることから、より専門知識が必要になります。
また、事業改善の見込みがなく、営業継続も困難であるという場合には、適切なタイミングで破産手続を行う必要がある為、弁護士だけではなく公認会計士や税理士などに相談する必要がある場合もあります。
このように破産手続きには非常に多くの手間と時間がかかりますが、破産手続は経営者にとって終わりを意味するものではありません。
一度事業を綺麗に清算することで新たな第一歩を踏み出すためのポジティブな手続ともいえるのではないでしょうか。