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内部留保とは?その重要性と高める方法

Retained earnings

リーマンショックや昨今のコロナウィルス感染症の拡大のように、突発的で重大な経済的事象の際「内部留保が多い会社は助かる」と言われています。よく企業のいざという時の備えとして話題に出されること内部留保とはいったいどのようなものなのでしょうか?今回は内部留保について詳しく説明します。

内部留保とは?

企業活動の結果、利益が生まれ、そこから経費や役員報酬、社員への給与などを引き、法人税などを支払い1年間の決算を出します。

さまざまなものを引いた結果、残れば「黒字」となります。黒字になれば株式会社の場合株主に配当を行うこともありますが、それを使わずに企業の余剰金として取っておくこともできます。

内部留保とはそうした「企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を引いたお金で、社内に蓄積された余剰金」を指します。

いわば、企業経営における「遊び」「フリーハンド」の使い道のある資金で、いざという時の「贅肉」ともいえます。山で遭難したときに助かるのは、筋肉質の人や痩せた人ではなく、ほどよく贅肉のある人です。

内部留保の重要性(内部留保の使い道)

決算で利益が出た場合、すごく株式を発行して増資したい気持ちになるかもしれませんが、内部留保は資本金にせず、そのまま余剰金として取っておきます。それは内部留保の重要性にかんがみないといけません。

内部留保は、本来株主に還元すべき配当や、設備投資、人件費(社員の給料)増額に充てるべきものを、耐えてもらい、積み上げているものです。その使い道が適当でなければ株主も社員もついてきません。

内部留保に増額によって以下のことが可能になります。

緊急事態の資金調達

昨年来のコロナウィルスの感染拡大によって、日本経済は甚大なダメージを受け、従来の企業活動は大きく制限されました。そうした中にあっても、固定費(家賃、維持費)、人件費等を支出し、会社と雇用を維持しなければなりません。

さまざまな緊急融資や雇用関係調整金など、非常時には公的な制度が設けられますが、それらが入金されるにはタイムラグがあります。また、100%満足な保証が得られることはありません。

つまり、いざという時の「公助」を待っていては会社や従業員が持たなくなる可能性があります。そのための「自助」、保険として内部留保を非常時の資金繰りに充てます。

従来「日本企業は内部留保を貯めすぎて社員や株主に還元していない」という批判がありましたが、今般のコロナウィルスの件で、非常時の資金として役立つことになりました。

債務超過に陥りにくくなる

後述のように、内部留保は純資産として計上されます。資産=負債+純資産ですから、内部留保が増えることで、負債の部分の割合が減少します。負債が減少すれば債務超過に陥りにくくなります。

債務超過の危険性が低ければ決算書のスコアは良くなり、融資に際してポイントが高いです。

また、突然の「黒字倒産」のリスクも下げることができます。手元に買掛金等の返済資金が一時的になくなってしまうと、黒字倒産してしまいますが、内部留保があれば咄嗟の祖払い需要にも対応できます。

攻めの経営に利用

内部留保があれば、新規事業や新製品開発投資のための資金にすることができます。借入ではないので、金融機関の審査もなく、自由に使える余地が広いです。

通常の経営をしていたらためらってしまうような「攻めの投資」「賭け」も内部留保を活用すればできます。内部留保の活用によって、これまでとは全く違う分野に進出してみるのもいいでしょう。借入金として残らないので、撤退も比較的容易です。

お金があれば投機的なこともできるというわけです。

損益計算書、貸借対照表から見る内部留保

決算書類である損益計算書と貸借対照表から内部留保を読み取ってみましょう。

損益計算書からみる内部留保

損益計算書から内部留保の元となる当期純利益を見ることができます。

売上高-売上原価(原材料費など)=売上総利益

売上総利益はいわゆる「粗利」です。

売上総利益-販管費(販売費および一般管理費)=営業利益

販管費とは要は経費のことです。

営業利益+営業外収益合計-営業外損益合計=経常利益
経常利益+特別利益合計-特別損失合計=税引前当期純利益

本業以外の副業などの利益と損失を計算していきます。

税引前当期利益-法人税等各種税金=当期純利益

最後に法人税等の税金を支払い、残ったものが当期利益で、完全に1年間の事業結果得られた純粋な利益になります。これが内部留保の「元」になります。これが+の場合「黒字決算」ということになります。

貸借対照表からみる内部留保

損益計算書によって計算された当期利益は貸借対照表に振り替えて記載されます。貸借対照表では「利益剰余金」という名前で純資産の部に掲載されています。「内部留保」は通称であり、会計用語としては「利益剰余金」と呼ばれることに注意してください。

純資産の部ではありますが「資本金」とは違うことに注意してください。あくまで、このお金はまだ増資に使っていないのです。増資ではないので登記の変更も必要ありません。比較的自由に使えるお金ということが分かります。

ただし、ここから株主の配当を行うことがあります。配当をしないで利益剰余金を貯めることもできますが、ここは株主を説得できるかどうかです。

原則的に

利益剰余金(内部留保)=当期純利益-配当 となります。

  • 配当しない場合:当期純利益=利益剰余金=「内部留保」
  • 配当した場合:当期純利益-配当=利益剰余金=「内部留保」

となります。

貸借対照表

資産

負債

 

 

 

 

 

 

 

純資産

 

資本金

 

利益剰余金(内部留保)

 

内部留保を高めるには

内部留保を高めるには

  • 当期純利益を大きくする
  • 配当を減らす

のいずれかの方法、ないしその両方を実践します。利益の絶対値が大きくなれば、配当してもなお利益剰余金の金額は増えます。そうでなければ、当期純利益から支払う配当金を減らすしかありません。 特に大企業では多数の株主を説得して配当を減らすことは難しく(彼らは出資者ですから)、一時的には経営を改善し利益を増やすのが近道です。

内部留保課税とは?(同族会社の課税制度について)

近年、日本企業の内部留保が多額になり、株主や従業員に還元していないという批判があります。 実際、企業の内部留保は増え続けています。

 

年月

2016年3月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

内部留保(兆円)

366

390

426

466

483

財務省 法人企業統計調査 結果の概要 企業は儲けを市場に出さすにため込んでいます。従業員給与に反映しなければ、経済が上向きません。そういうこともあり、内部留保に課税すべきということで、内部留保金課税制度が設けられています。 特に問題となるのが大企業ではなく、家族経営の同族企業です。個人事業主と変わらないのに、内部留保の形で利益を貯めこみ経費で落とすことが多いのです。株主(という名の家族親族)に配当を還元すれば、彼らには配当への所得税が課税されます。 しかし、内部留保を貯めれば、実質個人や家族の資産なのに「会社の内部留保」で課税逃れできてしまいます。 現在は一定の要件があり、大企業には適用されていませんが、今後も内部留保が増え続けるようだと、適用範囲が広がることが予想されます。

まとめ 企業の経営に関することのご相談は「企業パートナー110番」へ

内部留保を把握するためには、損益計算書や貸借対照表を読めないといけません。また不用意に内部留保を貯めすぎると課税されるリスクもあります。 課税されるくらいならば、上手に配当として還元したり、新しい投資に使ったりすべきです。しかし、使いすぎて内部留保が減りすぎると、いざという時のリスクヘッジが脆弱になります。 そのあたりの機微はなかなか難しいので専門家のアドバイスを受けるべきです。「企業パートナー110番」はそうした内部留保に詳しいプロフェッショナルが揃っています。ぜひ相談していただき、内部留保の上手な使い方をマスターしてください。

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