黒字倒産とは?会社が黒字でも倒産する理由
黒字倒産>赤字が続くから会社は倒産する。この当たり前ともいえる認識が揺らぐことがあります。それが「黒字倒産」です。利益が出ているのに倒産することはあり得るのでしょうか?黒字ということは、経費や人件費などをすべて支払って、そのうえで利益が出ているはずです。そこでなぜ黒字倒産という現象が起きてしまうのでしょうか?今回はこの摩訶不思議な現象について考えてみましょう。
そもそも倒産とは?
そもそも「倒産」とはどのようなことを指すのでしょうか?実は「倒産」は法律用語ではなく、統一的な定義はありません。
しかし、一般的には、個人や法人(会社)などが、債務超過などの経営上のミスによって、弁済期にある債務(借入の返済)などが継続的にできなくなってしまう状態をいいます。
「不渡り2回で事実上倒産」と言われるのも、返済期日に手形の決済という債務を果たすことが継続的にできなくなったことの表れでもあります。1回だけなら、うっかりミスや金融機関のシステムトラブルなど、偶然の要素も否定できませんが、2回、3回と続くと、これは事業を行って債務の弁済をすることができなくなっていることの何よりの証拠になります。
支払いが行えなくなる=倒産という構図が成立します。
会社が倒産状態になった場合はここでは触れませんが、任意整理、民事再生・破産などの法的手続きが必要になります。当然弁護士マターになり、裁判所なども絡んできてしまいます。そうなると弁護士に依頼して倒産処理をしなければならなくなります。
黒字倒産とは?
黒字ならば返済する資金があるから倒産はしないと思われがちですが、実は決算書上黒字でも返済ができなくなってしまうことがあります。
「黒字倒産」とは、決算書上では黒字の状態であるにもかかわらず、資金繰りの関係で法人などが倒産してしまうことを指します。
貸借対照表を見てみましょう。
貸借対照表は
資産 |
負債 |
純資産 |
|
合計 |
合計 |
※左右の合計額は等しい(資産=負債+純資産) こうなっていて、借入は負債に含まれます。黒字経営ということは、資産>負債であり、黒字分だけ純資産が増えていくことになります。普通に考えれば、負債が増えないのに倒産になることは考えられません。 資金繰りが悪化しているなら借入をします。そうなると負債が増えて、黒字にはならないはずです。黒字で利益が出て純資産が増えている状態なら、まずその利益を必要資金に充てればいいはずですが、なぜ黒字倒産してしまうのでしょうか?
黒字倒産する理由
黒字倒産してしまう理由は大きく分けて以下の2つの理由によります。
売掛金と買掛金のサイトの違い
ある商品を売った時、すぐにキャッシュで回収できればいいのですが、実際には「売掛金」として、後日まとめて回収することがあります。売掛金は資産として計上します。 一方、仕入れを掛けで行うこともあります。その場合の「買掛金」は負債として計上します。 この売掛金と買掛金の入金までの期日(サイト)の違いが、黒字倒産を生じさせてしまうことになります。 すごく単純化して説明します。 ・現金50万円が資本金としてある ・3月31日締め4月30日払いの買掛金が150万円ある(150万円で仕入れた) ・4月15日締め5月15日受取の売掛金が200万円ある(200万円で売った) 一見すると、問題ない取引のようにみえます。債務超過にも陥っておらず、売掛金が回収できれば利益が(200万円-150万円)=50万円 さらに総資産が増えます。当然黒字です。 しかし、4月30日時点でこの会社は不渡りを起こしてしまいます。4月30日には150万円の支払い義務があるのに、手元には50万円しかありません。売掛金に回収が5月15日なので入金が間に合わないのです。 債務超過でも借入過多でもなく、損益計算書上は特段の問題がないのに、この会社は買掛金を支払えず黒字倒産してしまうのです。
売掛金の不良債権化、不渡り
上の例と似ていますが、ある会社から回収するはずの売掛金が不良債権化してしまうケースです。不動産会社を経営していて、ある店子が何か月も家賃を滞納していて、その分の回収ができないようなケースや、売掛金が焦げ付いていて、先方の会社が倒産してしまうようなケースです。 見かけ上、資産だったはずの売掛金ですが、実際は負債になってしまっていた、そういう場合黒字倒産があり得ます。売掛先の経営が良くないのは何となくわかるので、ある程度防衛策が取れるかもしれません。 もっと深刻なのは、大口取引先が予期しない倒産をしてしまうと、期待していた収入が一切入らなくなってしまいます。当然、買掛金や経費の支払いができず、急な倒産なので、金融機関からの融資も間に合いません。 <h3>在庫管理のずさんさ 売掛金と買掛金のサイトは適切でも、在庫管理ができないと黒字倒産してしまうことがあります。要は売れない不良在庫を抱えすぎてしまうケースです。 商品や在庫は資産として計上します。しかし、仕入れたときの価格で資産計上しても、その後商品価値が暴落してしまえば、現金化しても仕入れ価格に程遠い安値になってしまいます。 ブームに乗じて仕入れたけど、その後あっという間にブームが去って、ワゴンセールでも売れなくなってしまった、そういうケースが当てはまります。帳簿上は商品在庫の資産が多く黒字なのですが、まったく売れないので、事実上不良債権となってしまっています。 新たに商品を仕入れようにも売れない商品しかないので、現金を手にすることができず、従業員へ給料の支払いなどができず倒産してしまいます。 <h2.黒字倒産を回避するには 金融機関からの借入が多くないはずなのに、いきなり黒字倒産してしまうリスクを回避するためには何ができるのでしょうか?
財務諸表を定期的にチェックする
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などを定期的にチェックしてください。売掛金の中で不良債権化しているもの、回収期限が来ても全然入金されていないものはありませんか? 本来期日が来れば現金化できるものです。金額が多く、今後の取引を希望しない売掛先ならば、法的措置を行い、ご自身の債権を回収するのも1つです。不良債権や不良在庫は資産ではありません。 これらが多いと、金融機関からの融資を受ける際もマイナス査定になってしまいます。財務諸表のチェックでこれらを消し込み、黒字倒産リスクを減らすことができます。
キャッシュフローの把握
キャッシュフローを把握することも大切です。見かけ上黒字でも、お金の流れがない黒字経営よりも、お金の動きがダイナミックな赤字の方が、将来性があり倒産リスクが低い可能性があります。 決算時に作成する「キャッシュフロー計算書」によって会社の実態を知ることができます。キャッシュフローには以下の3種類があり、着目している点や把握できる内容が異なります。
- 営業キャッシュフロー:本業での利益、現金の流れ
- 投資キャッシュフロー:株や不動産等への投資による現金の流れ(本業ではない)
- 財務キャッシュフロー:金融機関からの借入による現金の流れ
1が+、2が+、3が-になるのが健全な経営です。黒字経営の場合1が+のはずです。3はいざという時の「遊び」になる現金です。まったく借入をしない無借金経営もいいのですが、ある程度金融機関と「お付き合い」をしておくのも、緊急時の保険になります。
売掛金と買掛金のサイトの見直し
売掛金と買掛金のサイト設定ミスで、ケーススタディのような黒字倒産が起きます。そうならないためには、支払いのサイト(サイクル)よりも売上入金のサイクルを短くしてください。 売掛金の回収サイトが、買掛金の支払サイトよりも短ければ、現金がなくなることはなく、黒字倒産リスクを大きく減らすことができます。これは、取引先との条件交渉で比較的短期に解決できる対策法となります。
在庫の削減
まったく在庫がないのは商品がなくなるので好ましくありませんが、大量に仕入れても急に売れなくなるリスクがあります。 また、不良在庫になってしまったものは、いつまでも抱えていても仕方ありません。まったくお金にならなくても、決算書から消しておくことで、実態に伴った決算書となり、黒字倒産のリスクを減らします。
まとめ 資金繰り、資金調達のご相談は「企業パートナー110番」へ
以上黒字倒産について解説しました。黒字倒産は経営が順調だと思っていた矢先、いきなり資金の支払いができなくなり不渡りを起こして生じます。 その予兆や自社の経営リスクを把握するためには、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などを読むことが不可欠です。さはさりながら、なかなかそれらを読みこなすのは難しく、専門家のアドバイスを受けるべき場面もあります。 まず自社の経営に黒字倒産リスクがあるかないかを知りましょう。「企業パートナー110番」は決算書等から、リスクを診断できるプロフェッショナル集団です。ぜひ一度、自社の経営が黒字の方もご相談ください。思わぬ黒字倒産リスクが見つかるかもしれません。