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ABL(動産担保融資、売掛債権担保融資)について、分かりやすく解説します

ABL

金融機関から融資を受ける際、担保といえば不動産を思い浮かべます。しかし最近では「ABL」という新しい動産担保融資、売掛金担保融資が導入されつつあります。ここでは、そのABL融資について解説します。

ABL(アセット・ベースト・レンディング)とは

「ABL」とは、「動産(資産)担保」(Asset Based Lending:アセット・ベースト・レンディング)の頭文字をとったものです。

金融機関から融資を受ける際に、担保として提供するものが不動産(土地、建物)ではなく、動産や売掛債権など流動資産を担保にして資金調達を受ける融資を総称して、本稿で言及する「ABL融資」といいます。

このABL融資ですが、金融庁が積極的に進めていて、従来の不動産担保融資に加え、新しい担保付き資金調達の方法として取り扱うよう、全国の金融機関に通達を出しています。
それを受けて各金融機関もABL融資のメニューを揃えつつあり、窓口で相談するとしっかりとした説明を受けることができます。

『ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用について(金融庁通達)』
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1/01.pdf

動産担保融資とは

ABL融資の中でも「動産」を担保にした融資になります。

この場合の動産とは

  • 製品や商品の在庫
  • 仕掛品
  • 原材料
  • 機械
  • 車両

などを指します。ものを仕入れて販売している事業者や、製造業で機械や原材料を持っている業者はそれを担保にすることができます。売れていない商品、在庫や、製造前の原材料、製造途中の仕掛品なども動産として担保の対象になることがあります。

まず金融機関に相談してみるといいでしょう。

動産担保融資のメリット、デメリットは以下になります。

メリット

デメリット

不動産を有していなくても融資が容易にできる

不動産ほど動産担保の評価額が定まらない、基準が不明確

過剰在庫の有効利用

融資の実行までに時間がかかる

機械等が担保にされていると、差押え=即業務停止で倒産してしまう

過剰在庫を抱えている場合、あるいは遊休機械などがある場合、それを担保にすることで資金調達ができ、新しい事業に投資することができます。一方で、動産の評価は不動産ほど明確な基準がなく、融資する金融機関次第ということもあります。

遊休機械ではなく、事業に不可欠な機械や車両を担保にしてしまうと、差押えられた場合、即事業を続けることができなくなってしまいます。

売掛債権担保融資とは

ABL融資の中でも「売掛債権」を担保にした融資になります。売掛債権(売掛金)を使って資金調達するという意味では「ファクタリング」に似ていますが、違うところもあります(次の項で解説します)。

この場合の売掛債権とは

  • 売掛金
  • 売掛債権
  • 受取手形

などを指します。ファクタリングで買取ってもらえるものが該当すると考えてください。

売掛金担保融資のメリット、デメリットは以下になります。

メリット

デメリット

回収サイトが長い売掛金の有効利用

売掛金の評価額が金融機関によって異なる

売掛金回収前に資金調達ができる

融資の実行までにやや時間がかかる

売掛債権はそのまま自社名義である

売掛金回収前に返済するケースもある

 

売掛先にばれると今後の取引にマイナス

ファクタリングとの違いは次項で述べますが、回収サイト(期間)が長い売掛債権を持っている場合、回収前にこれを担保にしてお金を借りることができ、サイトの長さを有効活用できます。

売掛債権担保融資とファクタリングの違い

売掛債権担保融資と最近よく聞く「ファクタリング」の違いについてまとめます。

売掛債権担保融資は「融資」・ファクタリングは「売却」

大きな違いとして売掛債権担保融資は売掛債権を担保に「融資」を受けること、一方ファクタリングは売掛債権を「売却」(有償譲渡)することによる資金調達になります。

ABL融資の場合、売掛債権を担保にした借入を返済後は、再度、新しい融資を受けることが可能です。

ファクタリングの場合はそれとは異なります。売掛債権の譲渡、売却になるので、資金調達が可能なのはその回限りです。以降は、売掛債権の権利自体がファクタリング会社に譲渡されるため、もうその債権については何の権利もなくなってしまいます。

ABL融資が「融資」なので金利最大20%という利息制限法の適用を受けるのに対して、ファクタリング手数料は「譲渡」「売却」の手数料なので、適用できる法律がなく、実質金利数百%ということも珍しくありません。

ABL融資とファクタリングの比較表

ABL融資とファクタリング会について比較表にして、相違点をまとめてみました。

 

ABL融資(動産担保融資/売掛債権担保融資)

ファクタリング

資金調達方法

動産や売掛金を担保にした融資

売掛金をもらう権利を売る

評価対象

動産、売掛債権

売掛債権のみ

審査基準

会社、経営状態、融資申請会社の信用情報

売掛金契約書、売掛先の信用情報

審査期間

長い(2~3週間)

短い(最短即日)

信用情報照会

あり

なし

金利、手数料

低い

高い

動産譲渡登記

必要

不要なものもある

手続き

やや複雑

簡単

法的制限

利息制限法、銀行法等の適用

適用する法律がない

調達額

動産の価値に応じる

売掛金の額面未満

ファクタリングは最近様々な場面で広告などを見かけるようになりましたが、融資ではなく債権の買取なので、利息制限法の適用対象外であり、その他法律の保護もなく、リスクが大きい資金調達方法です。

ABL融資は「融資」なのでしっかりと法的に規制、保護があります。

ABLを利用した資金調達が向いている事業とは

ABL融資は資金調達の方法ですので、資金が足りている場合は利用しなくても大丈夫です。また、担保にできる不動産がある場合、そちらを担保にした方がいいです。壊れる、なくなる可能性のある動産と比べて、不動産は安定性が高いので、評価基準もブレが少なく、融資可能額もシミュレーションしやすくなっています。

しかし、不動産担保融資を利用できないケースや、(不動産があっても)ABL融資を活用した方がいいケースがあります。不動産担保融資ではなくABLの利用を検討したい事業として以下のものが考えられます。

  • 自社名義の不動産がない
  • 売掛金の入金サイトが長く運転資金が足りない傾向がある
  • 売上増に運転資金調達が追い付かない
  • 遊休機械や車両があり売却するよりも有効活用したい
  • 一時的に在庫を抱えてしまい当面売れる見込みがない
  • 経営状態が芳しくなく無担保融資が難しい

こうしたケースに、不動産以外のものを担保にできるABL融資を使って資金調達し、運転資金などを応需してしのぐという方法があります。せっかくのABLを無駄にせず活用してはいかがでしょうか?

まとめ

以上、新しい資金調達方法である「ABL融資」とその内容である動産担保融資、売掛金担保融資について説明させていただきました。これまでの「担保=不動産」というイメージから一歩進んだ動産や売掛債権を担保とする融資があることを知ってください。

国もABL融資の浸透を後押ししていますので、従来のように不動産を担保にできないからあきらめるのではなく、遊休機械や在庫を活用して資金調達する方法を知ってください。

また最近流行りのファクタリングとの違いを理解していただき、ファクタリングよりもABL融資の方が低リスクであることもご理解ください。

この記事を読んだだけでは難しい、そういう方は資金調達についてのプロフェッショナル「企業パートナー110番」へぜひご連絡をお願いします。

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